2019年8月9日金曜日

BOSSの新デジタル・ディレイ DD-200緊急レビュー

発売日が今日だということをうっかり忘れて公開が遅くなってしまいました。大変失礼致しました。

すでに200シリーズの4ラインナップが発表になっておりますが、グラフィック・イコライザーの「EQ-200」と、このデジタル・ディレイ「DD-200」が先行して発売されました。例によってスペックやマニュアルは公式サイトで既に公開されています。こちらでは実際に使用したみた印象をレポートします。



スペックの確認やマニュアルのダウンロードはこちら→BOSS DD-200公式サイト

サイズ感

実際のサイズを他の現行モデルと比較してみました。


DD-500:幅 (W)170 mm奥行き (D)138 mm 高さ (H)62 mm
DD-200:幅 (W)101 mm奥行き (D)138 mm 高さ (H)63 mm
DD-7 :幅 (W)73 mm  奥行き (D)129 mm   高さ (H)59 mm

DD-500とほぼ同じ奥行きと高さ。DD-200は幅が狭くなっています。


コンパクトのDD-7と比べると、二回りほど大きいサイズに見えます。INPUT/OUTPUT端子などは側面(横)では無く、上部(奥)側にあります。


実際にボードに置いてみました。以前にDD-500を置いていた場所に設置すると200シリーズを2台並べて置くことができます。


重さは、DD-200以外のカタログ表記では電池を含んだ数値になっているようです。電池を外して実測してみると…、

・DD-200:610g(これはカタログ・スペック)
・DD-500:約900g
・DD-7   : 約400g

DD-200はかなり軽い印象です。ボードに入れるのに丁度良いサイズですね。ただ、質量の数値には誤差があると思われますので、ご参考までということでお願いします。

サウンド

サンプリング周波数96kHz、AD/DA変換32bitのスペックを誇ります。DD-200とDD-500の同じモードを選び、実際に音出しして比較してみると非常に近い音質&音色と感じました。

モード数=12個とDD-500と同数ですが、内容は少しだけ異なります。「DUCKING」や「LO-FI」、「PAD ECHO」に加え"Binson EchoRec2"のモデリング「DRUM」もダイレクトに選択可能。DD-200でも充分なバリエーションをセレクトできます。一方、DD-500からは「FILTER」と「VINTAGE DIGITAL」が省かれています。さらに、各タイプ内の細かいパラメーターも省略されていますが、DD-500のような膨大なパラメーター操作が必要無いなら、むしろDD-200の方が扱いやすいと感じるかもしれません。


ノブはディレイ・タイプをセレクトする「モード」の他、「TIME」(押すことでTempo表示切り替え)、「FEEDBACK」、「E.LEVEL」、「TONE」、「MOD DEPTH」、「PARAMETER」の7個。「PARAMETER」にはタイプに合わせて効果的なものが自動的にアサインされます。例えば、「STANDARD」を選んだときは、ディレイ音の立ち上がり具合を調整することで「SLOW ATTACK」的な効果(DD-200にはモードとしての「SLOW ATTACK」はありません)を得たり、「TONE」と組み合わせて目立ち過ぎるディレイ音をオケに馴染むようなサウンドにすることも簡単です。


操作性

マニュアルと4つのメモリーを切り替える仕様は、ツイン・ペダル・シリーズの「DD-20」などでお馴染みの仕様。「MEMORY/TAP」スイッチを長押しすることでTAP入力が可能。「TAP DIVISION」ボタンで音価を変更します。

サウンド・メイクに関する全てのパラメータはノブだけでセッティングが完了するシンプルな構成。各コントローラー(フット・スイッチ類)のアサインやキャリー・オーバー(メモリー切り替え時にディレイ音がが途切れない効果)のON/OFFなどのシステム・パラメーターは「TAP DIVISION」と「MEMORY」を同時押しすることでアクセスできます。スイッチャーを併用する場合なら、本体のエフェクトのON/OFFスイッチは不要になりますから、別の効果をアサインしても便利そう。僕なら「WARP」を常用したいところです。

「MEMORY」ボタンを長押しで設定を保存。「TAP DIVISION」ボタンの長押しで、本番などで誤動作を防ぐための「パネル・ロック」機能を起動できます。

DD-500はパソコン用のエディターが用意されていますが、DD-200にはありません。まあ、本体の操作がとても簡単なので不要でしょう。

MIDI関連

別売のちょっと特殊なケーブルを使う必要がありますが、他のモデルとのMIDI接続が可能です。外部からのプログラム・チェンジでメモリーを切り替えられるのは勿論、CC(コントロール・チェンジ)情報で各パラメーターを制御したり、テンポを同期させたりできます。USB端子はプログラム・アップデート専用とのこと。DD-500のような強力な「バージョン2」などが公開されるんでしょうか?期待したいところです。



どんな人にオススメ?

以上のことを踏まえてまとめると…、

・省スペースで多機能なディレイが欲しい。
・シンプルで簡単な操作が好み。
・サウンドの品質を重視したい。
・1台で多くのモードを切り替えて使いたい。
・ライブなどで異なるセッティングを瞬時に呼び出したい。
・DD-20の操作に慣れていて、内容をグレードアップしたい。
・スイッチャーやマルチなどでMIDI制御したい。

なんていう方にはピッタリなモデルです。今後、僕もメインで使ってみようと思ってます。

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グラフィック・イコライザーの「EQ-200」も同時発売。こちらも面白い機能が満載の、他にはちょっとないタイプの製品。もう少しいろいろ実験して、このブログでレポートするつもりです。乞うご期待!!

2019年8月4日日曜日

BOSS SY-1レビュー ~ ファースト・インプレション

ギターを弾くだけで手軽にシンセ音を楽しめる画期的なモデル=SY-1。BOSSさんからお借りできたので早速、テストさせていただいています。どんな内容か気になっている人も多いのではないでしょうか?充実したサウンドと機能を備えた期待以上の仕上がりになっていますよ。

概要やスペックなどはこちらでどうぞ!→公式サイトへ
取扱説明書もすでに公開されています。→サポート・ページへ



SY-1の発音の仕組み

GKピックアップを使用するGRシリーズとは異なり、SY-1はギターからのノーマルな信号をシンセサイザーのような音に変換するエフェクターです。以前にご紹介したSY-300は、ユーザーが3オシレーターを自由にブレンドし、大量のパラメーターで多彩なサウンドを構築できる製品。それに対し、SY-1は121種類ものプリセット・トーンを呼び出し、必要最小限のパラメーターだけで誰でも直感的に音を作っていくことができる設計になっています。それでいて、サウンド面の妥協は一切ありません。単音だけでなく、コード・プレイにも問題無く対応します。パッド系やストリングス、オルガンなどのサウンドを、普通にギターを弾くだけで楽しむことができます。



実際にプレイしてみると…

実際に音を出してみると想像以上に面白い音を作り出すことができました。その印象をまとめてみましょう。

1. ピッキングに対しての反応

レーテンシー(音の遅れ)やトラッキング(意図しない音が発音されてしまう)の問題は皆無。ピッキングの強弱によるサウンドの変化もきわめてナチュラルです。コードやアルペジオを弾いたときなどでもフレーズに完全に追従して発音されます。

2. サウンド

タイプを切り替えるだけで美しいパッドやベル系からエグいリード・サウンド、インパクトのあるSE的なサウンドまで、次々に面白いサウンドが飛び出してきます。シンセ音なので、ライン接続でもOKなのですが、個人的にはそのままギターアンプから再生したサウンドもかなり使えると思いました。キーボード・タイプのシンセのサウンドそのまま、とまでは言えませんが、逆にSYシリーズならではのユニークなシンセ・サウンドとして確立していくような気がします。

公式サイトでは内蔵されている全てのシンセ音が視聴可能 → SY-1 SYNTHESIZER Sound Tryout

注意深く聴くと、いくつかのサウンドがレイヤーされて発音されているのがわかると思います。

3. 操作性

【DIRECT】&【EFFECT】ノブでノーマルなギター・サウンドとシンセ・サウンドを簡単にミックスできます。【TONE/RATE】と【DEPTH】はセレクトしたタイプによって自動的にアサインされます。どちらかといえば、フィルター系のパラメーターが多い印象。


SY-1を使う醍醐味はシンセの代用としてだけではなく、オクターバーやピッチシフター、コーラスやディレイといったエフェクターと同様に、原音にエフェクト音を追加するギターエフェクターとしての可能性ではないかと感じます。コンプ・クリーン系とストリングス、アルペジオ+ベル、ディストーション系リード+シンセ・リード、パワーコード+シーケンス・フレーズなど、キーボード不在のギターバンドにひと味違ったサウンドを加えるのに最適なアイテムとなりそうです。

SEND/RETURN端子を使用することで、歪み系などの外部エフェクターを分岐することができます。歪みサウンドとクリーンなシンセ音をミックスする場合などで活用できます。

4. コントローラー

本体のペダルを長押しすることで得られる「ホールド」や「EXP/CTL」端子に接続したペダルやフットスイッチによってさまざまな効果を加えられます。「ピッチをオクターブ上げる」、「フィルターの掛かりをリアルタイムに変化させる」、「シーケンス・フレーズなどのテンポを入力する」などの効果を加えられます。音に動的な変化をつければ、さらなる表現力のアップにつながると思います。写真ではEV-30を接続しています。



5. 拡張性

現在、BOSSのスイッチャー「ES-8」を載せたボードにSY-1を組み込んで試しています。コンパクトな筐体なので、場所を取らずスッキリと搭載できるのがイイですね。SY-1本体のSEND/RETURN端子に歪み系などを接続すれば、前述のようにシンセをミックスしたサウンドを出せるのですが、ES-8のループに組み込んで、パラレル(並列)接続をすることで、他のエフェクターとの組み合わせを自在に試すことができます。


複数の歪み系の組み合わせを切り替えたり、ギター音にだけエフェクトを掛ける(あるいはその逆とか)、などの実験が簡単に行えます。各エフェクトとの接続順も自由に行えますが、SY-1はダイレクト音を入力するほうが良さそう(つまり、ギター側の先頭に接続)に思いました。


ES-8側の「CTL OUT」とTRSケーブルを使ってタップ入力すれば、ES-8のパッチで設定したテンポに自動的に追従させることもできそう。

SY-1とGT-100/1000のSEND/RETURNと組み合わせても楽しそうです。

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まずは第一印象ということでご紹介しました。ST-1は9月発売予定。機会があれば動画なども作ってみたいと考えています。では!

2019年7月7日日曜日

快適なワイヤレス生活〜WL-60レビュー

BOSSのワイヤレス・システムの新製品、WL-60が発売になりました。遅ればせながらレビューします。

WL-60とは?

WL-60はトランスミッター(WL-60T)とレシーバーをパッケージした製品。60cmのBOSSケーブルが付属します。プラグがストレート<>L字になっているので、楽器や状況に合わせて使い分けられます。必要に応じてレシーバーの裏にゴム足を貼ってください。


トランスミッターはストラップやベルトなどに直接取り付けられるようになっています。


ストラップにもしっかりと挟み込んで固定できるので安心です。


トランスミッターはこれまでのWLシリーズとは異なり、アルカリ乾電池×2を使用します。連続で25時間使用できるとのこと。ライブで使う場合でも、新品の電池を入れておけばバッテリー切れの心配はありません。トランスミッターだけを追加購入することもできるので、ステージでのギター持ち替え時や、トラブル時のバックアップとして用意しておくことも可能です。


レシーバーはアルカリ乾電池 or ACアダプター(PSA-100s)の2電源方式。外部のエフェクターなどへ電源を供給できる、DCアウト端子も装備されています。


トランスミッターの電源を一旦オフにして、レシーバーの「SCAN」スイッチを押すと、チャンネルごとの使用状況がディスプレイに表示され、他の機材との干渉の少ない帯域が14chの中から自動的に選択されます。


手動でのチャンネルの指定もできますし、ディスプレイで現状が確認できるプロフェッショナル仕様。トランスミッターをレシーバー側に表示されたチャンネルに合わせて設定すればスタンバイ完了です。


プレイ・モード時のディスプレイには、右側に受信電波の強度、音声信号の入力があると左側に「SIG」と表示されます。


高音質を保ったまま、伝送範囲は20mまで(※)を確保。次回のライブの仕事にも持って行こうと思ってます。

※2.4GB帯の他の無線機器の使用状況によって変化します。

ケーブル・トーン

通常のパッシブ型のピックアップを搭載したエレキギター(ベース)の場合、使用するケーブルの長さによって高域成分が削られて音が甘くなることが知られています。WLシリーズはデジタル伝送される仕様なので、この劣化が起こりにくく、人によってはハイエンドが出過ぎていると感じるかもしれません。WL-60には(WL-50も)ケーブルを使用したときのサウンドをシミュレーションする機能が搭載されています。Short(3m)/Long(6m)のサウンド特性を切り替えられます。(OFF設定も可能)

他のWLシリーズとの詳細なスペックの違いは以下の公式サイトがわかりやすいですよ。


自宅でもワイヤレス

以前にご紹介したオールイン・ワンのアンプ、「KATANA AIR」が発売されて以降、僕にとってワイヤレスは自宅でプレイするときにも欠かせないアイテムになっています。さらにWL-60とWL-50、そしてスイッチャーES-8を併用することで快適な演奏環境が手に入りました。現在のセッティングをご紹介します。


WL-60のレシーバーの左上に置いてあるのがWL-50です。


・WL-50とWL-60はES-8のインプット1&2に接続。これで2本のギターをES側のスイッチ1つで切り替えられます。


・さらにギターを持ち替えたいときはWL-50のトランスミッターを差し替えるだけです。WL-50ではトランスミッターをジャックから抜くと信号が自動的に遮断されるので、アンプなどの電源を落とさなくても大丈夫のような気がします…が、メーカーからは推奨はされていないようなので、自己責任でお願いしまする。これがWL-50用の「WL-T」。


プラグの付け根にあるスイッチで信号がオン/オフされる仕組みです。


・勿論、ES-8のループに接続したエフェクターは入れ替え自由!


・アウト側は3系統を切り替えられるようにセッティング。2台のアンプ(現状はBlues Cube Artist&Nextone Artist)と「GT-1000」やオーディオ・インターフェイスに送る信号を瞬時にスイッチできるようにしています。これで接続先を変更する際に、いちいち結線する手間が省けます。瞬時に信号経路を変更できるので、ギター、アンプ、エフェクターなどを組み合わせた機材の相性も手に取るようにわかります。レーテンシー(音の遅れ)などは全く気になりませんね。


演奏が終わったら各機材の電源をオフにするだけ。ケーブルに足を引っ掛けて大事な楽器を倒してしまったり、イスのキャスターで踏んでしまう心配もありません。自分のセットにリーズナブルに追加できるワイヤレス・システム。気軽にプレイできる環境を作ることで、今以上に練習も楽しくなってますます上達するかも。オススメです。

2019年5月29日水曜日

元気です。

ご無沙汰です!このブログ、前回の更新(2018年11月)から半年間も休んでしまいました。うっかりしている内に元号は変わり、季節は初夏へ(ちょっと暑すぎるけど)。こちらは元気に暮らしています。何から書きましょうか?この半年間にあったことなどを簡単にまとめてみます。

楽器フェア2018

昨年の10月中旬に行われた楽器フェア。もう、遙か昔のような気がします。BOSSのマルチ・エフェクター「GT-1」と「KATANA AMP」のデモを担当しました。


そうそう、「GT-1」は現在も順調に売れているようです。その影響からか、シンコーミュージック・エンタテイメント刊「GT-1の教科書」も増刷され続けており、今回で5回目の重版(第6版)が決定しています。まあ、専門書なんで爆発的な売上げというわけではないのですが…。執筆担当者としては多くの方に読んで頂けているようで、とても嬉しく思っています。

イベントやライブ活動

年末から今年に掛けてはZEROさんのTourがありました。昨年から足元のライブ用機材はアコギ用のプリアンプも含めて「GT-1000」だけを使用しているのですが、アンプは昨年末に発売された「Nextone Artist」に変更しています。それまで使用していた「Blues Cube Artist」はフェンダー的なクリーン〜クランチ・サウンドが得意なのに対し、つまみの設定で幅広いサウンドに変更できる「Nextone」は奥が深いアンプ。試行錯誤しながら最良のトーンを得ることができました。いずれ改めて、このブログでテストの結果をレポートする予定です。


相変わらず、高校生などを対象としたエフェクター・セミナーなどのイベントのインストラクターの仕事もしていますが、以前と比べると回数は減りました。写真はこの春に札幌に行ったときのものです。



自宅での作業環境

で、最近は音源制作や原稿執筆など、自宅で作業することが多くなっています。昨年の転居の際に環境を整えたことで快適に過ごすことができてます。機材も少し変わりました。以前使用していたGENELECのスピーカー「8020B」が故障したのをきっかけに、Focal製の「Shape50」というモデルに買い換え。8020Bのエッジの効いた攻撃的なサウンドとはキャラクターが異なり、ややおとなしめでフラットな特性。長時間聴いていても疲れない、耳にやさしい音にも慣れてきました。防音室のおかげで、外の音が完全に遮断されていることもあって、ヘッドホンはほとんど使わなくなりました。


下は自宅でのテスト用ペダル・ボード。「ES-8」を中心にいろいろなエフェクターを取っ換え引っ換えしながら、いろいろな実験をしています。


自宅でのシステムで欠かせないアイテムになっているのがワイヤレス・システム「WL-50」です。ギターの持ち替え時も簡単ですし、室内にケーブルが散乱しないのは心地良いものです。電源を入れるだけですぐに音が出る環境は、気軽に練習を始められるので、楽器上達の早道かもしれませんよ。以前にご紹介したワイヤレス・システム内蔵のアンプ、「KATANA AIR」もオススメです。



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さてこのブログ、今後はどうしましょうか?読者も大分減ったかもしれませんね。まあ、その方が好きなことを書いていけるような気もします。機材に関する記事だけでなく、個人的なことなども書いていきたいと思っています。お付き合い頂けたら幸いです。

2018年11月27日火曜日

至福のヴィンテージ・サウンド〜BOSS Nextone Artistレビュー

遂に発売されたBOSSブランドの新しいアンプ「Nextone」シリーズ。期待を裏切らない、素晴らしいアンプに仕上がっています。公式サイトのカタログ・ページでも詳しく解説されていますし、すでに取扱説明書もダウンロードできるようになっていますから、ここでは個人的なオススメ・トピックをピックアップします。(それでも長文注意です)

外観

「Nextone Artist」はちょっとブリット・コンボ系のシックで落ち着いたデザイン。「Blues Cube Artist」より若干小振り。重量は16.2kg、30cm口径のスピーカーが搭載され、定格出力は80Wです。

一方、「Nextone Stage」のほうはスピーカーの口径は同じですが、一回り小さいサイズで、13.4kgとかなりの軽量になっており、出力が40Wに抑えられています。シックで落ち着いたデザインが好印象です。



真空管アンプの特徴

これまで、ギターアンプといえば増幅回路に真空管を使用したモデルが主流でした。僕自身も数々のアンプを購入してきましたが、以前はその利点について熟知できていたわけではありません。何となく「音が太くて抜ける?」、「歪ませた時の質感が違う?」くらいのアバウトな印象でそれらを使ってきたような気もします。しかし、ヴィンテージ系チューブ・サウンドを得意とするモデル、Fenderの「Tweed Deluxe Amp」を購入したり、マーシャル・ミュージアム等で歴代の名機を試奏したことで、そのサウンドに魅了されていったのです。最大の利点は、ピッキングに対するレスポンスの心地良さや弾きやすさです。ボリュームを上げていくことで得られる温かな歪みとコンプレッション。これがヴィンテージ系チューブアンプの人気の秘密なんです。

これは私物のTweed Deluxe Reissue

反面、チューブ・アンプはツアーなどで使えば最低でも年に1度はパワー管の交換が必要です。高額なメンテナンス料が掛かりますし、レンタルしていたアンプの真空管の劣化が原因でヒューズが飛んでしまい、ライブ当日に音が出なくなってしまって、本当に困ったこともあります。


上のアンプのリア部です

Nextoneシリーズは真空管こそ使用されていませんが、同様のサウンドを完璧に、しかもメンテナンス・フリーで得ることができるモデルなのです!


KATANA AMPシリーズとの違い

既発のKATANA AMPシリーズはどちらかと言えば全方位型。特にエディ的なマーシャル・サウンドを狙った「BROWN」やギターのボリューム操作によってクランチ~ハイゲインまでを自在にコントロールできる「LEAD」などのアンプ・タイプが売りです。多彩なマルチ・エフェクターも内蔵されているので、これ1台だけで完結できるポテンシャルを持っています。(そういえば、楽器フェアではKATANA HEADのデモを担当しました〜)



一方、NEXTONEシリーズは、エフェクターの搭載数は必要最小限に抑えられていますが、ヴィンテージ・アンプのサウンドを徹底的に追求。ハイゲインなサウンドよりはクリーン~クランチに特化したモデルという感じがします。




LEADチャンネルを選択すれば、極上のドライブ・サウンドになりますが、GAINをMAXに上げても、いわゆるハイゲインなサウンドにはなりません。




POWER AMP SELECTの実力は?

ここからが本題。パネルに表記されているように、パワーアンプ部の真空管タイプを切り替えられるようになっています。しかし、これまでの製品のようなモデリングやプロファイリングなどの技術でサウンドを再現するのではなく、ボリュームやトーン(EQUALIZER)との相互作用で、連続的にサウンドが変化してバリエーションを楽しめる仕様になっています。また、このスイッチはパワー管のキャラを変更するもので、スピーカー・シミュレーター的なニュアンスは含まれていません。極端な、例えば「スタック・アンプの再現」のようなものを目指したものではなさそうです。




しかし、下記のようなキャラクターに近い音色変化が簡単に得られます。

6V6:フェンダー系の小型アンプ。Deluxe、Deluxe Reverbなどで採用。
6L6:比較的出力の大きいフェンダー系やMesa Boogieの大出力タイプ。Tweed Bassman、Twin Reverb、Mesa/BoogieのMarkシリーズなど。
EL84:ブリット系コンボ。Vox AC30、マッチレス、フェンダーのBlues Jrなど。
EL34:マーシャルを始め、Orange、Bognerなど。

4種類のリアルなチューブ・サウンドを切り替えながら音を作っていくと、思わずいろいろなスタイルのフレーズを弾きたくなります。

Master Volumeの仕様

Nextoneシリーズを使いこなす上で覚えておいて欲しいポイントがあります。それは「MASTER VOLUME」の設定がサウンドに大きく影響するという点。真空管アンプの特徴でもあるのですが、パワーアンプ部に送り込まれる信号の大きさによって、「歪み」や「コンプレション感」、「飽和感」などが変化していきます。つまり、「MASTER VOLUME」の設定は音量だけでなく音色にも変化が現れることに注意してください。

「クリーン・チャンネル」を選択した場合、「VOLUME」と「MASTER VOLUME」を控えめに設定すると、ハムバッカーでも歪まないウォームなクリーン・サウンドが作れるのに対し、両者を上げていくことでとでさらに歪みとコンプレッション感を付加することができるのです。音量が大きくなりすぎる場合は「POWER CONTROL」を一段下げて対応してください。次の写真のように「POWER CONTROL」と「MASTER VOLUME」の設定次第で聴感上は同じ音量になりますが、音色的にはかなり異なった質感になります。




Nextoneシリーズの内蔵エフェクト

工場出荷時にパネル上で選択できるエフェクトは次の通りです。

・BOOST:ゲインを持ち上げることができます。選択しているチャンネルごとの設定は記憶されるので、CLEANではOFFにしてLEAD時はONのような設定にすることも可能です。

・TONE:CLEANではブライト・スイッチとして、LEAD時はFATスイッチにとして動作。これもチャンネルごとにメモリーされます。

・DELAY:アナログ・ディレイ風のディレイ。タップ・スイッチでディレイタイムを変更できます。

・REVERB:クリーンなデジタル・リバーブです。



コンパクトなどの歪み系エフェクターと組み合わせれば、無限のバリエーションを楽しめることは言うまでもありません。

マニアも納得のカスタム・モード

チャンネル切り替えスイッチを長押しすることで、「カスタム・モード」を選択できます。ノーマル時とは異なるエフェクトや設定がなされています。例えば、初期設定では、ディレイ・スイッチでトレモロが起動するようになっています。



パソコンとUSB接続してエディターを立ち上げると、さまざまな設定を変えることができるようになっています。ブースターの種類やコンプを起動したり、ディレイやリバーブのモード変更、パラメトリック・イコライザーなどで細部の調整を行えます。



ここで注目して欲しいのはパワー・アンプ部のパラメーター変更を行える点です。「BIAS」を下げ、「SAG」を上げることで、歪みやコンプレッション感を増強することができます。これは単に歪みを増やすというよりは、「MASTER VOLUME」の設定が低くてもコンプレッションを強く効くようにしたり、逆に「MASTER VOLUME」を上げてもクリーンなサウンドを維持したまま、音量を出したい場合などに使えます。残念ながらKATANA AMPのように設定をパッチのように切り替えることはできませんが、各パワーアンプの設定はメモリーできますから、例えば「6V6」は歪みやすく、「6L6」はクリーンに、といったチューニングを行えば便利でしょう。



プリアンプ部の「EQUALIZER TYPE」(=トーン・スタック)の切り替えも効果的。トーン・ツマミの効き方を「BRITISH(ツイード風など)」と「AMERICAN(ブラック・パネル風など)」に切り替えられるような感じです。




お気に入りの設定を本体のカスタム・モード内に保存しておくことで、自分だけのカスタム・アンプを所有しているような感覚を味わえます。

「Stage」と「Artist」の違い

内蔵エフェクトや機能は全く同じです。異なるのは筐体と出力だけなんですが、サウンドの傾向は少しだけ違うように感じました。「Artist」はレンジ感が広く、よりウォームなコンプレッションが特徴なのに対し、「Stage」はややソリッドでアタッキーな印象を持ちました。出力が異なることで飽和感と音量の関係も変わってくるので、プレイする環境や音楽性に合わせて選択すると良いと思います。



僕自身は「Nextone Artist」のほうがお気に入り。もう手放せませんね。来週からZeroさんのライブ・ツアーが始まるのですが、これを使ってみるつもりです。ライブでの使用感もいずれご報告しましょう!

2018年10月12日金曜日

緊急レポート! BOSS MT-2W編

 先週、BOSSの「技クラフト・シリーズ」の新作、「MT-2W」と「DC-2W」が発表になりました。今回は、特に人気モデルの「技クラフト」化なので、仕上がり具合が気になる方も多いかもしれません。一足先に自宅で試させて頂いたので、MT-2Wの個人的な印象をまとめてみたいと思います。


が、その前に…、

MT-2とは?

 今回のモデルの元になった「MT-2」は1991年に発売されて以降、ハイゲイン系ディストーションの代表的モデルとしてベストセラーになりました。BOSS以外の多くの機材にモデリングされていることからもその知名度の高さがうかがえます。どんなギターでも深く歪ませることができるので、長いサステインを伴ったパワーコード、分厚いリフはもとより、シングル系PU搭載のギターでの単音弾きでも、粘り感の強い、伸びやかなリード・サウンドを得られます。小音量のミニ・アンプなどでも迫力あるサウンドを響かせられる点も人気の秘密です。効きの強いセミ・パラメトリック仕様の3バンド・イコライザーでドンシャリ系〜ミッドの強いサウンドまでを演出。多弦ギターの低音弦でも簡単に歪みきらせることができます。

 ネーミングからメタラー御用達のイメージがありますが、現在では、ジャズ、ノイズ系、シューゲイザーなど、さまざまなスタイルのプレーヤーに愛用されています。



MT-2Wのカスタム・モード!!!

 で、今回のMT-2W。MT-2のオペアンプ×2基による増幅回路なのに対し、MT-2Wはディスクリート方式によるデュアル・ステージ・ゲイン回路。良質なバッファー回路の搭載と相まって、ハイゲイン・モデルなのに、ノイズが少ないクリーンなサウンドが特徴です。

 今回、個人的に最も注目して頂きたいと感じたのは「カスタム・モード」のサウンドです。これまでの「技クラフト・シリーズ」のカスタム・モード(特に歪み系モデル)は、ややマニアックというか、微妙なニュアンスの違いを味わえるものが多かったのに対し、MT-2Wの場合は、劇的にサウンドが切り替わります。まるで、ターボ・モードを備えているかのように…。

 スタンダード・モードはMT-2的でユニークなサウンドが特徴なのですが、カスタム・モードはハイゲインでありながら、もっとナチュラルな響き。輪郭のハッキリしたモダンなサウンドの印象です。DISTの設定によって、クランチ〜程良いディストーション〜ハイゲインまでを自在に設定可能です。


 イコライザーの効きはより強力に。ほんのわずか動かしただけで大きくサウンドが変化します。大胆な設定だけでなく、センシティブに調整することで目的のサウンドに追い込んでいくことができます。フェンダーやマーシャルなどのアンプとの相性も良さそう。Rolandの「Blues Cube」でも極上のサウンドに仕上がりました。アンプ側を少しだけ歪ませて、【DIST】を下げ【LEVEL】を上げた「ブースター」的な設定もOK。クリーン設定のJCとの組み合わせでは「HIGH」を少し控えめに設定すると良いかもしれません。

MT-2Wの使いどころ

 オーバードライブからファズまで、キャラクターの異なる歪み系をボードに搭載することは珍しいことでは無くなりました。MT-2Wは、伸びやかなリード・サウンド、「ハイゲインなアンプ・ライク」な使い方、飛び道具的な過激なサウンドまで、幅広いサウンドを作り出すことができるので、用意しておくことでいろいろな状況に対応することができそうです。これまでのBOSSのハイゲイン系のモデルはどちらかというとリフやバッキング向きのイメージがあるのですが、MT-2Wは単体でリード・サウンドまで対応できます。

 しかも、ギター側のボリューム操作することで、歪みのコントロールが可能。まるでBD-2のように…。【DIST】を上げたままの状態で、ギター・ボリュームを下げれば、3度を含んだローコードをガンガン弾いても濁らないトーンになるのは驚異的とも言えます。これなら、エフェクトをOnにしたまま、1曲を弾き通すこともできますね。

10月19日(金)発売とのこと。すでに、公式サイトでも試奏動画なども上がっているので、そのサウンドを確かめてみてください。



フレーズやセッティング、アンプとの組み合わせを自由に選択して試聴できる面白いページも公開されています。

こちらから!

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「楽器フェア2018」が10月19日(金)から10月21日(日)に開催されます。会場はお馴染み東京ビッグサイト。僕も前回に引き続きローランド・ブースに参戦致します。今回は大好評のマルチ・エフェクター=「GT-1」と「KATANA AMP」のデモを担当します。(尚、中野の21日の出演はありません)もちろん、今回ご紹介した「MT-2W」や「DC-2W」の試奏もOKです。是非、お越しください。

スケジュール等の詳細はこちらから→「楽器フェア2018」ローランド特設サイト