2019年12月22日日曜日

革新的な新技術も搭載〜WAZA-AIRレビュー その2

話題沸騰の「WAZA-AIR」。ジャイロ・センサーによるポジション変化は確かに面白いのですが、基本的なサウンドの良さや、激しい身体の動きでも外れない適度な側圧&心地良いフィット感の両立が実現されている点にも注目して欲しいところ。今回は、エディター/ライブラリアンでの操作や機能を中心に解説します。

前回の記事はこちら→「革新的な新技術も搭載〜WAZA-AIRレビュー その1」


Bluetoothでの接続

スマホやタブレットに「BTS for WAZA-AIR」というアプリをインストールすることで、細かくサウンドをエディットすることができます。本体との通信はアプリを起動させ、「Bluetooth SETTING」>「Bluetooth MIDI Device」で「WAZA-AIR MIDI」をタップするだけです。


パッチのエディット

・GYLO AMBIENCE:
それでは、パッチ内容をエディターで確認してみましょう。アプリを立ち上げたときに表示される、エディターの左上のパッチ名をタップするとパッチ・リストが表示されます。お好みのパッチを選択してください。(ここでは工場出荷時のパッチで説明します)尚、操作によって音は変わりますが、パッチを上書き保存しない限りいつでも最初のパッチ設定に戻せますから、どんどん試してみてください。


「GYLO AMBIENCE」画面で「POSITION」の【TYPE】を切り替えると【GUITAR POSITION】で表示された位置から音が聞こえます。【TYPE】=[SURROUND]に設定すると手動でポジションを指定できます。また、これを[OFF]にすると、「GYLO AMBIENCE」の効果が無くなります。この操作でWAZA-AIRの効果のスゴさが再認識できるんじゃないかな?

「AMBIENCE」で響きを変更できます。広いスペースを感じさせる「STAGE」と適度な広さの「STUDIO」、これは名前から想像される通りの効果です。【LEVEL】で効果を増減できますが、[0]に設定してもアンビエンス自体をカットすることはできないようです。

・AMP/EQ:
「AMP/EQ」タブをタップするとアンプ・タイプを切り替えたり、ゲインやトーンを変更できます。


各パラメータは上下のドラッグで変更できますが、長押しすることでテンキーを表示させて数値で指定することもできます。


・EFFECTS/PRESENCE:
「EFFECT]タブ内では各エフェクトの設定を確認/変更ができます。BOSSの「KATANA AMP」シリーズではお馴染みの設定方法なのですが、初めて見た人は少し混乱しそうなので、解説しておきましょう。

【EFFECTS/PRESENCE】画面の上段の3個のつまみで、各エフェクトの大まかな掛かりを増減できます。クリーン系のパッチを選択した場合は左のつまみが[10]と表示、リード系の場合は左端のパラメータは[6]になっているはずです。大きく上下にドラッグすると数値が変更できますが、12時の位置を境目に数字の動き方が変化します。これは、パラメータ表示の下にある、【BST/MOD】となっているように12時以下の場合はBST=BOOSTER、12時以上の場合はMOD=モジュレーションのパラメータを変更していることになります。何のパラメータ値を変更するかは、選択されているエフェクトのタイプによって決められています。パラメータを最小、または12時きっかりに設定するとOFFにできます(テンキーを起動させて右上の「×」アイコンを押してもOK)。


従って、原則的には左端のツマミ・アイコンで制御する歪み系とモジュレーション系、中央でのディレイとFX系は併用できません。しかし、FX内にもモジュレーション系が、そして、Reverb内には「ディレイ+リバーブ」という併用できるタイプがありますし、独立したイコライザーは別画面で設定可能なので、「歪み系>コーラス>EQ>ディレイ>リバーブ」などといった、数多くのエフェクトの同時使用が可能になっています。

パラメータの上側にあるインジケーターでは、予め設定されている3種類のエフェクターを切り替えられます。グリーン→レッド→オレンジと表示が変わります。

どんなエフェクトがチョイスされているかは、右上の【EDIT】をタップすると各セクションごとのエフェクト・アサインを確認/変更ができます。初期設定のクリーン系パッチではコンプ、歪み系パッチではクリーン・ブースターがアサインされていますね。モジュレーション内にはMXRのフェイザーやフランジャーのモデリングや、ディレイ=SDE-3000のサウンドなども用意されています。


上部のタブで各エフェクトのパラメーターをエディットできます(ここでは「BOOSTER」を選択)。この画面でもエフェクト・タイプの変更は可能ですが、エフェクトのON/OFFは最上段左の「<」アイコンで【EFFECTS/PRESENCE】画面に戻る必要があります。


また、【EFFECTS/PRESENCE】画面の右上にある「□-□〜」みたいなアイコンをタップすると、エフェクトの接続順序を変更できる「CHAIN SELECT」画面に切り替わります。「FX内のフェイザーをアンプ前段に接続する」というようなセッティングができます。


サウンド・メイクに関して見落としがちなのが、画面下部の「SYSTEM」>「CABINET」で選択できる【CABNET RESONANCE】。渋めの[VINTAGE]からレンジの広い[DEEP]まで3段階に切り替えられます。これはパッチ依存ではなく、WAZA-AIR全体のキャラクターを変更するパラメータになります。試してみてください。


パッチの管理

作成したパッチを保存したい場合は 、最上部右端の「WRITE」をタップし、メニューから[WRITE]を選択します。本体のパッチは上書きされます。また、パッチを0から構築したい場合は、[CLEAR]を選ぶことでパッチを初期化できます。


本体には6種類のパッチを保存できますが、ライブラリアン機能を使えば、最大30ライブセット内に20パッチ=計600個を保存可能。さらに、書き出し(EXPORT)機能を利用すれば無限にパッチをスマホ内やクラウド上に保管しておけます。各パッチのデータはそれほど大きいサイズではないので、容量の小さいスマホでも全然大丈夫です。


自分でパッチを作るのは面倒な場合は、下部のバナーから「TONE CENTRAL」をタップし、予め用意されている好みのスタイルから選択できます。現在は5スタイル+プリセット・パッチだけですが、今後どんどん増えていくのだと思われます。


スクロールして表示されるパッチ名をタップするとすぐに設定されたサウンドでプレイすることができます。上部の「ADD」をタップすれば、スマホ内のライブラリアンに保存され、電波状況が悪い場合でも、パッチを本体に送信できるようになります。


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「気軽に良い音でプレイしたい」人には勿論、「自分でサウンドを構築したい」ユーザーにまで対応した機能満載のWAZA-AIR。どこにでも手軽に持ち運べるので、全く新しい演奏体験を味わえるかもしれません。暖かくなったら、部屋の窓を開け放したまま、風を感じながらのプレイ、なんて楽しそうじゃない?(今は季節的に寒いけどね…)。

2019年12月16日月曜日

革新的な新技術も搭載〜WAZA-AIRレビュー その1

話題の新製品、「WAZA-AIR」を入手しました。イヤー、ビックリした〜。ノーマルなヘッドホンによるサウンドとどこが異なるのか、という点も含めて早速レポートしましょう。

まずは概要から

「WAZA-AIR」は、「立体音響テクノロジーとジャイロ・センサーにより、実際にアンプ・キャビネットを鳴らしているような自然な音場を再現」する「ヘッドホン型ギターアンプ」です。ギターにトランスミッターを直接装着し、電源を入れるだけで、演奏に必要なセットアップが完了。大きな音が出せない環境でも、素晴らしいサウンドでプレイに没頭できる、全く新しいコンセプトで開発された製品です。



試奏開始!

箱から取り出して、マニュアルなど、何も読まないままに取りあえず試してみました。左右(LR)の表示はヘッドバンドの付け根の内側にありますが、側面にスイッチなどがあるほうを右側へ、と覚えましょう。本体の操作はシンプルなので、迷うことはありませんね。左耳側の電源スイッチを入れ、右耳側のシルバーのつまみを上下方向にまわすことで音量調整ができます。2つのスイッチでは、本体にメモリーされた6種類のパッチを切り替えられます。


さて、気になるサウンドは?…

僕の自宅には防音工事を施してあるスタジオがあり、狭いながらもアンプを普通に鳴らせる環境なので、最初は「ヘッドホン?必要無いかも。」と思っていました。しか〜し!!この製品は、出音に定評あるBOSSのKATANA AMPシリーズのサウンドを、自宅では再現不可能な「広いスペースでの音場」を疑似体験できるところ、それが最大の魅力と感じました。音源(アンプ)からの距離感を感じられる、ナチュラルで包み込まれるようなサウンド。通常のヘッドホン環境ではありがちな「聴き疲れ」が少ないので、時間を忘れて楽しく演奏できそうです。

初期設定での歪み系パッチはギター側のボリュームが全開だとかなり歪んだサウンドなのですが、「クランチ~ドライブ~ハイゲイン」まで、ギターのボリュームだけでコントロールできる、KATANA AMPシリーズ共通の特性が活かされています。

ケーブルが足に絡まるなんてこともなしに、ヘッドホンをしたまま、踊りながら、そして部屋から部屋へ移動なんてことも可能です。持ち運びにも便利な折りたたみ式なので、ライブ時の楽屋や、ツアー先のホテルの部屋などでの練習やウォーム・アップするのにも、うってつけ、ですね。



工場出荷時のパッチについて

右の側面のスイッチでパッチを切り替えていくと、クリーン系と歪み系が交互に切り替わります。
工場出荷時のセッティングは次のようになっているようです。

01:「CLEAN SURROUND」
02:「LEAD SURROUND」
03:「CLEAN STATIC」
04:「LEAD STATIC」
05:「CLEAN STAGE」
06:「LEAD STAGE」

通常のマルチ・エフェクターのプリセットとは異なり、アンプやエフェクターのサウンド・バリエーションではなく、2種のサウンド(クリーン系と歪み系)に対し、3種類の「演奏環境」=「GYRO AMBIENCE」を設定したパッチが用意されています。(2種類のサウンド×3種類の演奏環境=計6パッチ)

それぞれのタイプは公式サイトの解説によれば…、

サラウンド・モード:スタジオでアンプを鳴らしているかのような部屋鳴り感を再現。
スタティック・モード:目の前にあるアンプが、現実の空間と同じようにプレイヤーの頭の動きに合わせて立体的かつリアルな定位で鳴り響きます。
ステージ・モード:ステージ上でパフォーマンスしているかのように、背後からアンプのサウンドが聞こえてくる音場になります。アンプのサウンドが実際に空気を伝わり耳へ届くようなリアルなサウンド・スケープを体感できます。

サラウンド・モード時は音が固定されて、音場の変化は現れないのでわかりやすいと思います。スタティックとステージ・モードは首を左右に動かしたり、その場で自分が回転してみると、アンプの置いてある位置が頭の中でイメージされる、何とも不思議な感覚を味わえます。通常のパンポットでのセッティングとは全く異なる、正に3次元的な音像です。

店頭での試奏時などで音が鳴らない場合は、トランスミッターをヘッドホン側のジャックに10秒間程度、接続すると復活します。(ワイヤレス信号を安定化させるために搭載されている機能です)

Bluetoothでできること

WAZA-AIRはBluetoothを利用して、次の2つのことができます。

・Bluetooth Audio
他の機器からの信号の再生させることができます。パソコンやスマホなどに入っているCDなどの音源だけでなく、ネット上の音源を再生可能です。YouTube上のライブや教則系の動画を見ながら、それに合わせてプレイすることも可能です。

実際にやってみると、普通のヘッドホンを使っている時よりも、自分の音が聴きやすく感じます。通常、ヘッドホンでモニターするときは、シビアに音量バランスを調整する必要がありますが、WAZA-AIRの場合はセッティングを全く触らずに、バッキング系とリード系の音がバランスよく、自然に聞こえてきます。「抜けの良い音」というのとは少し違う、音の存在感が感じられるのです。

ステージ・モードのパッチを選択すると、自分のギターの音だけでなく、CDなどの音源も自分の背後に定位されます。バカでかい会場のステージでバックバンドを従えて演奏するような感覚を自宅で再現できますよ。ライブ音源に合わせても違和感は全くなし。Deep Purpleの「Live in Japan」の中に自分が入り込んで、自由に動きながら演奏しているみたいになりました。これは面白い!


・Bluetooth MIDI
スマホ or タブレットの専用アプリ(※)と連係することで、WAZA-AIRの全ての機能にアクセスすることができます。6種類のアンプタイプに加え、GTシリーズに匹敵する歪み系、モジュレーション系、空間系などの膨大なエフェクトを搭載。エディターを使って、これらを駆使したサウンドを自分で構築したり、クラウド上に公開されているパッチをダウンロードして利用することができます。


 (※註)「BOSS TONE STUDIO for WAZA-AIR」。iOS or AndroidのApp Storeから無料でダウンロードできます。

ふ~、長くなってしまいました。が、WAZA-AIRが持っているポテンシャルはこれだけの文章量では説明しきれません。近々に続きをアップしますね。

2019年12月9日月曜日

近況と今後の更新予定

またまた、ご無沙汰です。こちらは元気です。ブログの更新が滞ってしまい、申し訳ありません。

いくつかの時間を要する案件が片付いたので、最近はゆったりと過ごしています。今回は軽く近況など…。

近況(主に仕事のこと)

今年はライブやセミナーよりも制作系の仕事が多かったです。高校の軽音楽クラブの生徒さんたちに向けたセミナーを除けば、生演奏で行うデモは少なかった印象。現在は自宅のネット環境で何でも簡単に聴ける時代ですからね。


今年発売されたBOSSの新製品、新しい機能を搭載したループ・ステーション「RC-10R」、ツイン・ペダル・シリーズの後継とも言えそうな「200シリーズ」、コンパクト・シリーズのデジタル・ディレイのリニューアル、そして、先週発表になったギターシンセ「SY-1000」やヘッドホン型ギターアンプ「WAZA-AIR」など、ユニークな機能と先鋭的なサウンドを備えたモデルが次々に登場しました。いくつかのモデルでは、プリセット・パッチの作成などで関わらせて頂いています。


2018年3月に出版された「BOSS GT-1の教科書」は、この手の書籍としては異例のロング・セラーになっています。おかげさまでなんと!現時点で第7版まで増刷されています。まあ、それだけ「GT-1」の実機が売れ続けているということ。ありがたいことです。そんなわけで、新刊を執筆する機会はなかったのですが、原稿の依頼は増えました。「GT-1000」のムックの発売に関する問い合わせも頂いていますが、いまのところ予定はありません。シンコーさんなどに要望が集まれば、実現するかもしれませんね。


Myスタジオを手に入れたことにより、自宅で快適に作業できるようになりました。先月は、来年発売予定のCDに収録される楽曲をまとめてレコーディング。ただ、商用スタジオとは異なり、部屋鳴りの少ないデッドなスタジオなので、実験しながら時間を掛けて録音しています。特に、アコースティック・ギターの録音では「こんなに良い音で録れるのか!」と感激する反面、もっと高品位なコンデンサー・マイクが欲しくなってしまいました。エレキ・パートは「GT-1000」だけで問題無し!


少し前のことになるのですが、ヴィンテージのアコギを購入してしまいました。ギブソンの1959年製「Country Western」というモデル。近い内にこのブログでご紹介しますね。


そして、来年の2月からはZeroさんの全国ツアーの予定。どんな機材で臨もうかと考え中です。

今後のブログについて

実は、Roland/BOSSの仕事を始めてから今年で30年。そう、30年前の平成元年(1989年)は僕にとって大きな転機となった年でもありました。今後は、平成の30年間を振り返るような記事や、以前のように、プライベートなこともざっくばらんに書いていきたいと思っています。もちろん、これまで通りにBOSSの製品レビューも更新していきます。とりあえず、次回は「SY-1000」のレビューの予定。情報解禁まで、今しばらくお待ちください!