2019年12月22日日曜日

革新的な新技術も搭載〜WAZA-AIRレビュー その2

話題沸騰の「WAZA-AIR」。ジャイロ・センサーによるポジション変化は確かに面白いのですが、基本的なサウンドの良さや、激しい身体の動きでも外れない適度な側圧&心地良いフィット感の両立が実現されている点にも注目して欲しいところ。今回は、エディター/ライブラリアンでの操作や機能を中心に解説します。

前回の記事はこちら→「革新的な新技術も搭載〜WAZA-AIRレビュー その1」


Bluetoothでの接続

スマホやタブレットに「BTS for WAZA-AIR」というアプリをインストールすることで、細かくサウンドをエディットすることができます。本体との通信はアプリを起動させ、「Bluetooth SETTING」>「Bluetooth MIDI Device」で「WAZA-AIR MIDI」をタップするだけです。


パッチのエディット

・GYLO AMBIENCE:
それでは、パッチ内容をエディターで確認してみましょう。アプリを立ち上げたときに表示される、エディターの左上のパッチ名をタップするとパッチ・リストが表示されます。お好みのパッチを選択してください。(ここでは工場出荷時のパッチで説明します)尚、操作によって音は変わりますが、パッチを上書き保存しない限りいつでも最初のパッチ設定に戻せますから、どんどん試してみてください。


「GYLO AMBIENCE」画面で「POSITION」の【TYPE】を切り替えると【GUITAR POSITION】で表示された位置から音が聞こえます。【TYPE】=[SURROUND]に設定すると手動でポジションを指定できます。また、これを[OFF]にすると、「GYLO AMBIENCE」の効果が無くなります。この操作でWAZA-AIRの効果のスゴさが再認識できるんじゃないかな?

「AMBIENCE」で響きを変更できます。広いスペースを感じさせる「STAGE」と適度な広さの「STUDIO」、これは名前から想像される通りの効果です。【LEVEL】で効果を増減できますが、[0]に設定してもアンビエンス自体をカットすることはできないようです。

・AMP/EQ:
「AMP/EQ」タブをタップするとアンプ・タイプを切り替えたり、ゲインやトーンを変更できます。


各パラメータは上下のドラッグで変更できますが、長押しすることでテンキーを表示させて数値で指定することもできます。


・EFFECTS/PRESENCE:
「EFFECT]タブ内では各エフェクトの設定を確認/変更ができます。BOSSの「KATANA AMP」シリーズではお馴染みの設定方法なのですが、初めて見た人は少し混乱しそうなので、解説しておきましょう。

【EFFECTS/PRESENCE】画面の上段の3個のつまみで、各エフェクトの大まかな掛かりを増減できます。クリーン系のパッチを選択した場合は左のつまみが[10]と表示、リード系の場合は左端のパラメータは[6]になっているはずです。大きく上下にドラッグすると数値が変更できますが、12時の位置を境目に数字の動き方が変化します。これは、パラメータ表示の下にある、【BST/MOD】となっているように12時以下の場合はBST=BOOSTER、12時以上の場合はMOD=モジュレーションのパラメータを変更していることになります。何のパラメータ値を変更するかは、選択されているエフェクトのタイプによって決められています。パラメータを最小、または12時きっかりに設定するとOFFにできます(テンキーを起動させて右上の「×」アイコンを押してもOK)。


従って、原則的には左端のツマミ・アイコンで制御する歪み系とモジュレーション系、中央でのディレイとFX系は併用できません。しかし、FX内にもモジュレーション系が、そして、Reverb内には「ディレイ+リバーブ」という併用できるタイプがありますし、独立したイコライザーは別画面で設定可能なので、「歪み系>コーラス>EQ>ディレイ>リバーブ」などといった、数多くのエフェクトの同時使用が可能になっています。

パラメータの上側にあるインジケーターでは、予め設定されている3種類のエフェクターを切り替えられます。グリーン→レッド→オレンジと表示が変わります。

どんなエフェクトがチョイスされているかは、右上の【EDIT】をタップすると各セクションごとのエフェクト・アサインを確認/変更ができます。初期設定のクリーン系パッチではコンプ、歪み系パッチではクリーン・ブースターがアサインされていますね。モジュレーション内にはMXRのフェイザーやフランジャーのモデリングや、ディレイ=SDE-3000のサウンドなども用意されています。


上部のタブで各エフェクトのパラメーターをエディットできます(ここでは「BOOSTER」を選択)。この画面でもエフェクト・タイプの変更は可能ですが、エフェクトのON/OFFは最上段左の「<」アイコンで【EFFECTS/PRESENCE】画面に戻る必要があります。


また、【EFFECTS/PRESENCE】画面の右上にある「□-□〜」みたいなアイコンをタップすると、エフェクトの接続順序を変更できる「CHAIN SELECT」画面に切り替わります。「FX内のフェイザーをアンプ前段に接続する」というようなセッティングができます。


サウンド・メイクに関して見落としがちなのが、画面下部の「SYSTEM」>「CABINET」で選択できる【CABNET RESONANCE】。渋めの[VINTAGE]からレンジの広い[DEEP]まで3段階に切り替えられます。これはパッチ依存ではなく、WAZA-AIR全体のキャラクターを変更するパラメータになります。試してみてください。


パッチの管理

作成したパッチを保存したい場合は 、最上部右端の「WRITE」をタップし、メニューから[WRITE]を選択します。本体のパッチは上書きされます。また、パッチを0から構築したい場合は、[CLEAR]を選ぶことでパッチを初期化できます。


本体には6種類のパッチを保存できますが、ライブラリアン機能を使えば、最大30ライブセット内に20パッチ=計600個を保存可能。さらに、書き出し(EXPORT)機能を利用すれば無限にパッチをスマホ内やクラウド上に保管しておけます。各パッチのデータはそれほど大きいサイズではないので、容量の小さいスマホでも全然大丈夫です。


自分でパッチを作るのは面倒な場合は、下部のバナーから「TONE CENTRAL」をタップし、予め用意されている好みのスタイルから選択できます。現在は5スタイル+プリセット・パッチだけですが、今後どんどん増えていくのだと思われます。


スクロールして表示されるパッチ名をタップするとすぐに設定されたサウンドでプレイすることができます。上部の「ADD」をタップすれば、スマホ内のライブラリアンに保存され、電波状況が悪い場合でも、パッチを本体に送信できるようになります。


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「気軽に良い音でプレイしたい」人には勿論、「自分でサウンドを構築したい」ユーザーにまで対応した機能満載のWAZA-AIR。どこにでも手軽に持ち運べるので、全く新しい演奏体験を味わえるかもしれません。暖かくなったら、部屋の窓を開け放したまま、風を感じながらのプレイ、なんて楽しそうじゃない?(今は季節的に寒いけどね…)。

2019年12月16日月曜日

革新的な新技術も搭載〜WAZA-AIRレビュー その1

話題の新製品、「WAZA-AIR」を入手しました。イヤー、ビックリした〜。ノーマルなヘッドホンによるサウンドとどこが異なるのか、という点も含めて早速レポートしましょう。

まずは概要から

「WAZA-AIR」は、「立体音響テクノロジーとジャイロ・センサーにより、実際にアンプ・キャビネットを鳴らしているような自然な音場を再現」する「ヘッドホン型ギターアンプ」です。ギターにトランスミッターを直接装着し、電源を入れるだけで、演奏に必要なセットアップが完了。大きな音が出せない環境でも、素晴らしいサウンドでプレイに没頭できる、全く新しいコンセプトで開発された製品です。



試奏開始!

箱から取り出して、マニュアルなど、何も読まないままに取りあえず試してみました。左右(LR)の表示はヘッドバンドの付け根の内側にありますが、側面にスイッチなどがあるほうを右側へ、と覚えましょう。本体の操作はシンプルなので、迷うことはありませんね。左耳側の電源スイッチを入れ、右耳側のシルバーのつまみを上下方向にまわすことで音量調整ができます。2つのスイッチでは、本体にメモリーされた6種類のパッチを切り替えられます。


さて、気になるサウンドは?…

僕の自宅には防音工事を施してあるスタジオがあり、狭いながらもアンプを普通に鳴らせる環境なので、最初は「ヘッドホン?必要無いかも。」と思っていました。しか〜し!!この製品は、出音に定評あるBOSSのKATANA AMPシリーズのサウンドを、自宅では再現不可能な「広いスペースでの音場」を疑似体験できるところ、それが最大の魅力と感じました。音源(アンプ)からの距離感を感じられる、ナチュラルで包み込まれるようなサウンド。通常のヘッドホン環境ではありがちな「聴き疲れ」が少ないので、時間を忘れて楽しく演奏できそうです。

初期設定での歪み系パッチはギター側のボリュームが全開だとかなり歪んだサウンドなのですが、「クランチ~ドライブ~ハイゲイン」まで、ギターのボリュームだけでコントロールできる、KATANA AMPシリーズ共通の特性が活かされています。

ケーブルが足に絡まるなんてこともなしに、ヘッドホンをしたまま、踊りながら、そして部屋から部屋へ移動なんてことも可能です。持ち運びにも便利な折りたたみ式なので、ライブ時の楽屋や、ツアー先のホテルの部屋などでの練習やウォーム・アップするのにも、うってつけ、ですね。



工場出荷時のパッチについて

右の側面のスイッチでパッチを切り替えていくと、クリーン系と歪み系が交互に切り替わります。
工場出荷時のセッティングは次のようになっているようです。

01:「CLEAN SURROUND」
02:「LEAD SURROUND」
03:「CLEAN STATIC」
04:「LEAD STATIC」
05:「CLEAN STAGE」
06:「LEAD STAGE」

通常のマルチ・エフェクターのプリセットとは異なり、アンプやエフェクターのサウンド・バリエーションではなく、2種のサウンド(クリーン系と歪み系)に対し、3種類の「演奏環境」=「GYRO AMBIENCE」を設定したパッチが用意されています。(2種類のサウンド×3種類の演奏環境=計6パッチ)

それぞれのタイプは公式サイトの解説によれば…、

サラウンド・モード:スタジオでアンプを鳴らしているかのような部屋鳴り感を再現。
スタティック・モード:目の前にあるアンプが、現実の空間と同じようにプレイヤーの頭の動きに合わせて立体的かつリアルな定位で鳴り響きます。
ステージ・モード:ステージ上でパフォーマンスしているかのように、背後からアンプのサウンドが聞こえてくる音場になります。アンプのサウンドが実際に空気を伝わり耳へ届くようなリアルなサウンド・スケープを体感できます。

サラウンド・モード時は音が固定されて、音場の変化は現れないのでわかりやすいと思います。スタティックとステージ・モードは首を左右に動かしたり、その場で自分が回転してみると、アンプの置いてある位置が頭の中でイメージされる、何とも不思議な感覚を味わえます。通常のパンポットでのセッティングとは全く異なる、正に3次元的な音像です。

店頭での試奏時などで音が鳴らない場合は、トランスミッターをヘッドホン側のジャックに10秒間程度、接続すると復活します。(ワイヤレス信号を安定化させるために搭載されている機能です)

Bluetoothでできること

WAZA-AIRはBluetoothを利用して、次の2つのことができます。

・Bluetooth Audio
他の機器からの信号の再生させることができます。パソコンやスマホなどに入っているCDなどの音源だけでなく、ネット上の音源を再生可能です。YouTube上のライブや教則系の動画を見ながら、それに合わせてプレイすることも可能です。

実際にやってみると、普通のヘッドホンを使っている時よりも、自分の音が聴きやすく感じます。通常、ヘッドホンでモニターするときは、シビアに音量バランスを調整する必要がありますが、WAZA-AIRの場合はセッティングを全く触らずに、バッキング系とリード系の音がバランスよく、自然に聞こえてきます。「抜けの良い音」というのとは少し違う、音の存在感が感じられるのです。

ステージ・モードのパッチを選択すると、自分のギターの音だけでなく、CDなどの音源も自分の背後に定位されます。バカでかい会場のステージでバックバンドを従えて演奏するような感覚を自宅で再現できますよ。ライブ音源に合わせても違和感は全くなし。Deep Purpleの「Live in Japan」の中に自分が入り込んで、自由に動きながら演奏しているみたいになりました。これは面白い!


・Bluetooth MIDI
スマホ or タブレットの専用アプリ(※)と連係することで、WAZA-AIRの全ての機能にアクセスすることができます。6種類のアンプタイプに加え、GTシリーズに匹敵する歪み系、モジュレーション系、空間系などの膨大なエフェクトを搭載。エディターを使って、これらを駆使したサウンドを自分で構築したり、クラウド上に公開されているパッチをダウンロードして利用することができます。


 (※註)「BOSS TONE STUDIO for WAZA-AIR」。iOS or AndroidのApp Storeから無料でダウンロードできます。

ふ~、長くなってしまいました。が、WAZA-AIRが持っているポテンシャルはこれだけの文章量では説明しきれません。近々に続きをアップしますね。

2019年12月9日月曜日

近況と今後の更新予定

またまた、ご無沙汰です。こちらは元気です。ブログの更新が滞ってしまい、申し訳ありません。

いくつかの時間を要する案件が片付いたので、最近はゆったりと過ごしています。今回は軽く近況など…。

近況(主に仕事のこと)

今年はライブやセミナーよりも制作系の仕事が多かったです。高校の軽音楽クラブの生徒さんたちに向けたセミナーを除けば、生演奏で行うデモは少なかった印象。現在は自宅のネット環境で何でも簡単に聴ける時代ですからね。


今年発売されたBOSSの新製品、新しい機能を搭載したループ・ステーション「RC-10R」、ツイン・ペダル・シリーズの後継とも言えそうな「200シリーズ」、コンパクト・シリーズのデジタル・ディレイのリニューアル、そして、先週発表になったギターシンセ「SY-1000」やヘッドホン型ギターアンプ「WAZA-AIR」など、ユニークな機能と先鋭的なサウンドを備えたモデルが次々に登場しました。いくつかのモデルでは、プリセット・パッチの作成などで関わらせて頂いています。


2018年3月に出版された「BOSS GT-1の教科書」は、この手の書籍としては異例のロング・セラーになっています。おかげさまでなんと!現時点で第7版まで増刷されています。まあ、それだけ「GT-1」の実機が売れ続けているということ。ありがたいことです。そんなわけで、新刊を執筆する機会はなかったのですが、原稿の依頼は増えました。「GT-1000」のムックの発売に関する問い合わせも頂いていますが、いまのところ予定はありません。シンコーさんなどに要望が集まれば、実現するかもしれませんね。


Myスタジオを手に入れたことにより、自宅で快適に作業できるようになりました。先月は、来年発売予定のCDに収録される楽曲をまとめてレコーディング。ただ、商用スタジオとは異なり、部屋鳴りの少ないデッドなスタジオなので、実験しながら時間を掛けて録音しています。特に、アコースティック・ギターの録音では「こんなに良い音で録れるのか!」と感激する反面、もっと高品位なコンデンサー・マイクが欲しくなってしまいました。エレキ・パートは「GT-1000」だけで問題無し!


少し前のことになるのですが、ヴィンテージのアコギを購入してしまいました。ギブソンの1959年製「Country Western」というモデル。近い内にこのブログでご紹介しますね。


そして、来年の2月からはZeroさんの全国ツアーの予定。どんな機材で臨もうかと考え中です。

今後のブログについて

実は、Roland/BOSSの仕事を始めてから今年で30年。そう、30年前の平成元年(1989年)は僕にとって大きな転機となった年でもありました。今後は、平成の30年間を振り返るような記事や、以前のように、プライベートなこともざっくばらんに書いていきたいと思っています。もちろん、これまで通りにBOSSの製品レビューも更新していきます。とりあえず、次回は「SY-1000」のレビューの予定。情報解禁まで、今しばらくお待ちください!


2019年8月9日金曜日

BOSSの新デジタル・ディレイ DD-200緊急レビュー

発売日が今日だということをうっかり忘れて公開が遅くなってしまいました。大変失礼致しました。

すでに200シリーズの4ラインナップが発表になっておりますが、グラフィック・イコライザーの「EQ-200」と、このデジタル・ディレイ「DD-200」が先行して発売されました。例によってスペックやマニュアルは公式サイトで既に公開されています。こちらでは実際に使用したみた印象をレポートします。



スペックの確認やマニュアルのダウンロードはこちら→BOSS DD-200公式サイト

サイズ感

実際のサイズを他の現行モデルと比較してみました。


DD-500:幅 (W)170 mm奥行き (D)138 mm 高さ (H)62 mm
DD-200:幅 (W)101 mm奥行き (D)138 mm 高さ (H)63 mm
DD-7 :幅 (W)73 mm  奥行き (D)129 mm   高さ (H)59 mm

DD-500とほぼ同じ奥行きと高さ。DD-200は幅が狭くなっています。


コンパクトのDD-7と比べると、二回りほど大きいサイズに見えます。INPUT/OUTPUT端子などは側面(横)では無く、上部(奥)側にあります。


実際にボードに置いてみました。以前にDD-500を置いていた場所に設置すると200シリーズを2台並べて置くことができます。


重さは、DD-200以外のカタログ表記では電池を含んだ数値になっているようです。電池を外して実測してみると…、

・DD-200:610g(これはカタログ・スペック)
・DD-500:約900g
・DD-7   : 約400g

DD-200はかなり軽い印象です。ボードに入れるのに丁度良いサイズですね。ただ、質量の数値には誤差があると思われますので、ご参考までということでお願いします。

サウンド

サンプリング周波数96kHz、AD/DA変換32bitのスペックを誇ります。DD-200とDD-500の同じモードを選び、実際に音出しして比較してみると非常に近い音質&音色と感じました。

モード数=12個とDD-500と同数ですが、内容は少しだけ異なります。「DUCKING」や「LO-FI」、「PAD ECHO」に加え"Binson EchoRec2"のモデリング「DRUM」もダイレクトに選択可能。DD-200でも充分なバリエーションをセレクトできます。一方、DD-500からは「FILTER」と「VINTAGE DIGITAL」が省かれています。さらに、各タイプ内の細かいパラメーターも省略されていますが、DD-500のような膨大なパラメーター操作が必要無いなら、むしろDD-200の方が扱いやすいと感じるかもしれません。


ノブはディレイ・タイプをセレクトする「モード」の他、「TIME」(押すことでTempo表示切り替え)、「FEEDBACK」、「E.LEVEL」、「TONE」、「MOD DEPTH」、「PARAMETER」の7個。「PARAMETER」にはタイプに合わせて効果的なものが自動的にアサインされます。例えば、「STANDARD」を選んだときは、ディレイ音の立ち上がり具合を調整することで「SLOW ATTACK」的な効果(DD-200にはモードとしての「SLOW ATTACK」はありません)を得たり、「TONE」と組み合わせて目立ち過ぎるディレイ音をオケに馴染むようなサウンドにすることも簡単です。


操作性

マニュアルと4つのメモリーを切り替える仕様は、ツイン・ペダル・シリーズの「DD-20」などでお馴染みの仕様。「MEMORY/TAP」スイッチを長押しすることでTAP入力が可能。「TAP DIVISION」ボタンで音価を変更します。

サウンド・メイクに関する全てのパラメータはノブだけでセッティングが完了するシンプルな構成。各コントローラー(フット・スイッチ類)のアサインやキャリー・オーバー(メモリー切り替え時にディレイ音がが途切れない効果)のON/OFFなどのシステム・パラメーターは「TAP DIVISION」と「MEMORY」を同時押しすることでアクセスできます。スイッチャーを併用する場合なら、本体のエフェクトのON/OFFスイッチは不要になりますから、別の効果をアサインしても便利そう。僕なら「WARP」を常用したいところです。

「MEMORY」ボタンを長押しで設定を保存。「TAP DIVISION」ボタンの長押しで、本番などで誤動作を防ぐための「パネル・ロック」機能を起動できます。

DD-500はパソコン用のエディターが用意されていますが、DD-200にはありません。まあ、本体の操作がとても簡単なので不要でしょう。

MIDI関連

別売のちょっと特殊なケーブルを使う必要がありますが、他のモデルとのMIDI接続が可能です。外部からのプログラム・チェンジでメモリーを切り替えられるのは勿論、CC(コントロール・チェンジ)情報で各パラメーターを制御したり、テンポを同期させたりできます。USB端子はプログラム・アップデート専用とのこと。DD-500のような強力な「バージョン2」などが公開されるんでしょうか?期待したいところです。



どんな人にオススメ?

以上のことを踏まえてまとめると…、

・省スペースで多機能なディレイが欲しい。
・シンプルで簡単な操作が好み。
・サウンドの品質を重視したい。
・1台で多くのモードを切り替えて使いたい。
・ライブなどで異なるセッティングを瞬時に呼び出したい。
・DD-20の操作に慣れていて、内容をグレードアップしたい。
・スイッチャーやマルチなどでMIDI制御したい。

なんていう方にはピッタリなモデルです。今後、僕もメインで使ってみようと思ってます。

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グラフィック・イコライザーの「EQ-200」も同時発売。こちらも面白い機能が満載の、他にはちょっとないタイプの製品。もう少しいろいろ実験して、このブログでレポートするつもりです。乞うご期待!!

2019年8月4日日曜日

BOSS SY-1レビュー ~ ファースト・インプレション

ギターを弾くだけで手軽にシンセ音を楽しめる画期的なモデル=SY-1。BOSSさんからお借りできたので早速、テストさせていただいています。どんな内容か気になっている人も多いのではないでしょうか?充実したサウンドと機能を備えた期待以上の仕上がりになっていますよ。

概要やスペックなどはこちらでどうぞ!→公式サイトへ
取扱説明書もすでに公開されています。→サポート・ページへ



SY-1の発音の仕組み

GKピックアップを使用するGRシリーズとは異なり、SY-1はギターからのノーマルな信号をシンセサイザーのような音に変換するエフェクターです。以前にご紹介したSY-300は、ユーザーが3オシレーターを自由にブレンドし、大量のパラメーターで多彩なサウンドを構築できる製品。それに対し、SY-1は121種類ものプリセット・トーンを呼び出し、必要最小限のパラメーターだけで誰でも直感的に音を作っていくことができる設計になっています。それでいて、サウンド面の妥協は一切ありません。単音だけでなく、コード・プレイにも問題無く対応します。パッド系やストリングス、オルガンなどのサウンドを、普通にギターを弾くだけで楽しむことができます。



実際にプレイしてみると…

実際に音を出してみると想像以上に面白い音を作り出すことができました。その印象をまとめてみましょう。

1. ピッキングに対しての反応

レーテンシー(音の遅れ)やトラッキング(意図しない音が発音されてしまう)の問題は皆無。ピッキングの強弱によるサウンドの変化もきわめてナチュラルです。コードやアルペジオを弾いたときなどでもフレーズに完全に追従して発音されます。

2. サウンド

タイプを切り替えるだけで美しいパッドやベル系からエグいリード・サウンド、インパクトのあるSE的なサウンドまで、次々に面白いサウンドが飛び出してきます。シンセ音なので、ライン接続でもOKなのですが、個人的にはそのままギターアンプから再生したサウンドもかなり使えると思いました。キーボード・タイプのシンセのサウンドそのまま、とまでは言えませんが、逆にSYシリーズならではのユニークなシンセ・サウンドとして確立していくような気がします。

公式サイトでは内蔵されている全てのシンセ音が視聴可能 → SY-1 SYNTHESIZER Sound Tryout

注意深く聴くと、いくつかのサウンドがレイヤーされて発音されているのがわかると思います。

3. 操作性

【DIRECT】&【EFFECT】ノブでノーマルなギター・サウンドとシンセ・サウンドを簡単にミックスできます。【TONE/RATE】と【DEPTH】はセレクトしたタイプによって自動的にアサインされます。どちらかといえば、フィルター系のパラメーターが多い印象。


SY-1を使う醍醐味はシンセの代用としてだけではなく、オクターバーやピッチシフター、コーラスやディレイといったエフェクターと同様に、原音にエフェクト音を追加するギターエフェクターとしての可能性ではないかと感じます。コンプ・クリーン系とストリングス、アルペジオ+ベル、ディストーション系リード+シンセ・リード、パワーコード+シーケンス・フレーズなど、キーボード不在のギターバンドにひと味違ったサウンドを加えるのに最適なアイテムとなりそうです。

SEND/RETURN端子を使用することで、歪み系などの外部エフェクターを分岐することができます。歪みサウンドとクリーンなシンセ音をミックスする場合などで活用できます。

4. コントローラー

本体のペダルを長押しすることで得られる「ホールド」や「EXP/CTL」端子に接続したペダルやフットスイッチによってさまざまな効果を加えられます。「ピッチをオクターブ上げる」、「フィルターの掛かりをリアルタイムに変化させる」、「シーケンス・フレーズなどのテンポを入力する」などの効果を加えられます。音に動的な変化をつければ、さらなる表現力のアップにつながると思います。写真ではEV-30を接続しています。



5. 拡張性

現在、BOSSのスイッチャー「ES-8」を載せたボードにSY-1を組み込んで試しています。コンパクトな筐体なので、場所を取らずスッキリと搭載できるのがイイですね。SY-1本体のSEND/RETURN端子に歪み系などを接続すれば、前述のようにシンセをミックスしたサウンドを出せるのですが、ES-8のループに組み込んで、パラレル(並列)接続をすることで、他のエフェクターとの組み合わせを自在に試すことができます。


複数の歪み系の組み合わせを切り替えたり、ギター音にだけエフェクトを掛ける(あるいはその逆とか)、などの実験が簡単に行えます。各エフェクトとの接続順も自由に行えますが、SY-1はダイレクト音を入力するほうが良さそう(つまり、ギター側の先頭に接続)に思いました。


ES-8側の「CTL OUT」とTRSケーブルを使ってタップ入力すれば、ES-8のパッチで設定したテンポに自動的に追従させることもできそう。

SY-1とGT-100/1000のSEND/RETURNと組み合わせても楽しそうです。

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まずは第一印象ということでご紹介しました。ST-1は9月発売予定。機会があれば動画なども作ってみたいと考えています。では!

2019年7月7日日曜日

快適なワイヤレス生活〜WL-60レビュー

BOSSのワイヤレス・システムの新製品、WL-60が発売になりました。遅ればせながらレビューします。

WL-60とは?

WL-60はトランスミッター(WL-60T)とレシーバーをパッケージした製品。60cmのBOSSケーブルが付属します。プラグがストレート<>L字になっているので、楽器や状況に合わせて使い分けられます。必要に応じてレシーバーの裏にゴム足を貼ってください。


トランスミッターはストラップやベルトなどに直接取り付けられるようになっています。


ストラップにもしっかりと挟み込んで固定できるので安心です。


トランスミッターはこれまでのWLシリーズとは異なり、アルカリ乾電池×2を使用します。連続で25時間使用できるとのこと。ライブで使う場合でも、新品の電池を入れておけばバッテリー切れの心配はありません。トランスミッターだけを追加購入することもできるので、ステージでのギター持ち替え時や、トラブル時のバックアップとして用意しておくことも可能です。


レシーバーはアルカリ乾電池 or ACアダプター(PSA-100s)の2電源方式。外部のエフェクターなどへ電源を供給できる、DCアウト端子も装備されています。


トランスミッターの電源を一旦オフにして、レシーバーの「SCAN」スイッチを押すと、チャンネルごとの使用状況がディスプレイに表示され、他の機材との干渉の少ない帯域が14chの中から自動的に選択されます。


手動でのチャンネルの指定もできますし、ディスプレイで現状が確認できるプロフェッショナル仕様。トランスミッターをレシーバー側に表示されたチャンネルに合わせて設定すればスタンバイ完了です。


プレイ・モード時のディスプレイには、右側に受信電波の強度、音声信号の入力があると左側に「SIG」と表示されます。


高音質を保ったまま、伝送範囲は20mまで(※)を確保。次回のライブの仕事にも持って行こうと思ってます。

※2.4GB帯の他の無線機器の使用状況によって変化します。

ケーブル・トーン

通常のパッシブ型のピックアップを搭載したエレキギター(ベース)の場合、使用するケーブルの長さによって高域成分が削られて音が甘くなることが知られています。WLシリーズはデジタル伝送される仕様なので、この劣化が起こりにくく、人によってはハイエンドが出過ぎていると感じるかもしれません。WL-60には(WL-50も)ケーブルを使用したときのサウンドをシミュレーションする機能が搭載されています。Short(3m)/Long(6m)のサウンド特性を切り替えられます。(OFF設定も可能)

他のWLシリーズとの詳細なスペックの違いは以下の公式サイトがわかりやすいですよ。


自宅でもワイヤレス

以前にご紹介したオールイン・ワンのアンプ、「KATANA AIR」が発売されて以降、僕にとってワイヤレスは自宅でプレイするときにも欠かせないアイテムになっています。さらにWL-60とWL-50、そしてスイッチャーES-8を併用することで快適な演奏環境が手に入りました。現在のセッティングをご紹介します。


WL-60のレシーバーの左上に置いてあるのがWL-50です。


・WL-50とWL-60はES-8のインプット1&2に接続。これで2本のギターをES側のスイッチ1つで切り替えられます。


・さらにギターを持ち替えたいときはWL-50のトランスミッターを差し替えるだけです。WL-50ではトランスミッターをジャックから抜くと信号が自動的に遮断されるので、アンプなどの電源を落とさなくても大丈夫のような気がします…が、メーカーからは推奨はされていないようなので、自己責任でお願いしまする。これがWL-50用の「WL-T」。


プラグの付け根にあるスイッチで信号がオン/オフされる仕組みです。


・勿論、ES-8のループに接続したエフェクターは入れ替え自由!


・アウト側は3系統を切り替えられるようにセッティング。2台のアンプ(現状はBlues Cube Artist&Nextone Artist)と「GT-1000」やオーディオ・インターフェイスに送る信号を瞬時にスイッチできるようにしています。これで接続先を変更する際に、いちいち結線する手間が省けます。瞬時に信号経路を変更できるので、ギター、アンプ、エフェクターなどを組み合わせた機材の相性も手に取るようにわかります。レーテンシー(音の遅れ)などは全く気になりませんね。


演奏が終わったら各機材の電源をオフにするだけ。ケーブルに足を引っ掛けて大事な楽器を倒してしまったり、イスのキャスターで踏んでしまう心配もありません。自分のセットにリーズナブルに追加できるワイヤレス・システム。気軽にプレイできる環境を作ることで、今以上に練習も楽しくなってますます上達するかも。オススメです。