2015年5月25日月曜日

BOSS・ES-8レビューその2

発売直前の画期的スイッチャー=「ES-8」のレビュー第2弾です。既存のスイッチャーを大きく超える多彩なコントローラー機能をご紹介しましょう。

※ES-8レビューその1はこちら

コントロール・イン

外部フットスイッチなどでES-8本体の設定をコントロールすることができます。僕は写真のようにFS-7を接続していますが、TRS(ステレオ)ケーブルを使うことで「CTL1&CTL2」として2系統の操作を1本のケーブルで行えるようにしています。


省スペースのため、L字プラグのTRSケーブルを使用。これは「Custom Audio Japan」製のものです。


ES-8のアサインをパッチごとに設定することで、多様な効果を得ることができます。僕自身はここに「インプット&アウトプット・セレクト」や「パッチ・モード時にディレイやコーラスだけをOn/Offするスイッチ」、「Volume LoopのON/OFF」などをアサインしています。

●コントロール・アサイン

外部フットスイッチだけでなく、本体の全てのスイッチをカスタマイズすることができます。パッチ・モード時でも特定のフット・スイッチをコントロール用に動作させることができるので、自分にとって使い易い設定を考えてみてください。例えば、ループの「7」や「8」などにアサインすれば、7&8のパッチ変更はキャンセルされ、コントロール・ペダルとして動作します。その際、他のパッチに移動した場合は、通常の「7 or 8」番パッチを呼び出すようにすることもできるというところがミソです。
 
それぞれのスイッチに対して簡易な設定を行うことができる他、GT-100の8個を超える、12個の「Assign」を割り当てることができます。「SOURCE」と「TARGET」を設定することで、ES-8本体と外部に接続した機器をコントロール可能。


GTシリーズのように、各スイッチに付随しているLEDの点灯さえも設定可能。僕はLoop=「8」にディレイを接続していますが、パッチ・モード時もディレイがOnになっているパッチは8番のLEDが点灯するようにしています。

コントロール・アウト

パッチに追従して「CTL OUT」に接続した機器をコントロールすることもできます。例えば、「DS-2」のリモート・ジャックに接続すれば、パッチを切り替える度にターボ・モードの設定も自由自在に行えます。


ここも非常に考えられていて、「LATCH」タイプではない仕様のモデルにも対応しています。例えば、Bognerの「Ectasy Red」のリモート機能はモーメンタリー式のスイッチを使う必要があるのですが、通常のモーメンタリーだと本体側のフット・スイッチがキャンセルされる仕様。ES-8はモーメンタリー用に「PLS」と「INV」の2種類が搭載されているので、接続機器に合わせて設定することで問題無く使用できます。


Bognerの場合、「INV」に設定すればEcstasy本体側のスイッチも有効になります。


因みにこのモデルの場合、TRSケーブルを使えばエフェクトのON/OFFとブーストのON/OFFをそれぞれにコントロール可能です。

ディレイ・タイムを追従させる

コントロール・アウトに接続したディレイなどの「Delay Time」をパッチに追従させることも可能です。DD-20を使って設定方法を説明した動画を撮りましたのでご覧ください。


ここではタイム表示があるDD-20で説明していますが、タイム表示が無く、メモリー機能のない「DD-7」などを使った場合も、テンポに対して正確なDelayTimeを設定出来てしまうんですね。スゴイ!

一方、DD-7の【Delay Time】を動作中に動かすとピッチがグニョグニョに変化することはご存じだと思います。「EV-5」などを使って足で操作するなんていうワザも有名ですね。ES-8の「EXP」OUTを使用し、「Wave Pedal」という機能を使って自動化することもできます。DD-7との接続には「TRS(ステレオ)」ケーブルを使用します。これもムービーを見てみてください。


ここでは、わかりやすいように派手に動かしましたが、狭い範囲を微妙に動かすことで、「モジュレート・ディレイ」的な効果を得ることもできます。ピッチ・シフターの「PS-6」やフェイザー「PH-3」などのモジュレーション系に同様のアサインを行っても面白いと思います。


MIDIセッティング

MIDIは大きく分けると以下のような使い方が想定されます。

1. 外部のMIDI機器からES-8をコントロール
GTシリーズなどのパッチ・チェンジと同期させたり、ステージ袖でローディーさんが別のコントローラーを使ってパッチ切り替えする場合などに便利ですね。

2. 外部のMIDI機器のパッチを同期
マルチ・エフェクターやMIDIとメモリー機能を搭載したモデルのパッチを同期させることができます。MIDIチャンネルを分けることで、最大で8チャンネル分のプログラム・チェンジを送信できます。勿論、その際のPCナンバーはチャンネルごとに設定可能です。


3. MIDIコントロール・チェンジ
CCナンバーを送信することで、外部機器側のパラメーターをコントロール可能。パッチ・チェンジ時に、最大でパッチに対して8チャンネル×2=16個ものデータを送信できます。パッチ同期に加え、CTLアサインも行えばさらに多くの設定を送信することも可能です。MIDI系もCTL系も、パッチ切り替え時に自動送信させることと、特定の動作(例えばスイッチを踏むことなど)で送信することを別々に設定できる、というところがポイントです。


4. テンポ情報の同期
DAWや外部機器とテンポ情報を共有することができます。スライサー=「SL-20」や新しいギターシンセ=「SY-300」と同期させても面白そうです。同期はMasterとしてもSlaveとしても使えます。

さて、いかがだったでしょう?あまりにも多彩な機能があるES-8なので、僕自身もどのように使用するかまだまだ実験中という感じです。面白い使い方を発見したらまたレポートします。

2015年5月22日金曜日

「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック 3」発売!

新刊「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック 3」が昨日、無事に発売されたようです。今回は、「BOSS歪み系ペダル編」ということで、全41モデルを対象に、たっぷりと時間を掛けて書き上げました。おそらく他では読むことができないBOSSの歪み系の秘密や、BOSS以外のモデルとの比較なども交えて執筆しています。是非、ご覧ください!

本書の「はじめに」の部分を公開致します。

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はじめに

 多くのギタリストにとって、ギターやアンプの次に最も重要なアイテムは、歪み系エフェクターなのではないでしょうか? BOSSのコンパクト・シリーズは、既に100種類を超えるモデルがリリースされていますが 、その中の約1/3が歪み系であることからも、その重要性を計り知ることができます 。今回の「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック」は、BOSS の歪み系エフェクターがテーマ。 本書では、 BOSSコンパクトの歪み系モデルを41 機種(ローランド・ブランドのモデル、“FB-2”やレジェンド・シリー ズを含む)について詳細に解説します。 各モデルが発売された歴史的背景や、後に与えた影響なども 踏まえて発売順にご紹介。現行機種として今でも購入できるものも、すでに生産が完了しているもの も分け隔てなく書いたつもりです。
 筆者は1989年以降、セッション・プレイヤーとしての活動と並行し、BOSSのデモ・プレイヤーとして多くのイベント、セミナーなどで演奏してきました。「BOSSコンパクト辞典」の付属CDや、楽器店で配布されていたDVDや公式サイトの動画などでデモを聴いていただいたことがあるかもしれません。今回、これらの仕事を通して発見したことや、開発エンジニアとのコミュニケーションの中で知り得たさまざまな情報を公開します。
 各モデルに搭載されているコントローラーが、実際はどのように動作しているかや、電気回路が各製品にどのように影響しているかなど、僕自身が疑問に思っていたことも含めて解き明かしていこうと思います。
 今回の執筆にあたり、現行モデルは勿論、今や伝説となった「幻のモデル」や BOSS 以外の歪み系 モデルも含めてたっぷりと時間を掛けてテストを繰り返し行ないました。 付属の CD にはこれらの実験中に録音した音源から選りすぐったサウンドを収録しています。こちらも是非、聴いてみてください。
 お楽しみ頂けたら幸いです。
 
                             中野 豊


2015年5月17日日曜日

BOSS・ES-8レビューその1

いよいよ、5月28日(木)に発売が決定したBOSSのスイッチャー=ES-8。使えば使うほど、スゴイ製品に仕上がってきたなぁ、と実感しています。僕自身はエフェクターボードの中身をあれこれと入れ替え実験継続中なんですが、ホント、楽しすぎます。コンパクト・エフェクターだけでなく、GT-001を入れてみたりしています。(これは結構便利かも!)

※ES-8レビューその2はこちら


「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック3」とES-8

5月21日(木)には拙著「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック 3」が発売されます。今回はBOSS歪み系エフェクターがテーマ。モデル別のサウンドの違いや、他のメーカーとの比較実験などを行う際に、この「ES-8」は非常に役に立ちました。ケーブルを差し替える事無く、多数のモデルを聴き比べられる環境がなければ書けなかったことも多かったですし、何より、パッチ切り替え時の音切れやノイズなどは全く無いことで、正確な判断ができたように思います。この本については後日に改めてご紹介させていただく予定です。(Amazonへのリンクはこちら!

ES-8でどんなことができるかはBOSSの公式サイトにも詳しく解説されているので、ここでは具体的な画面構成などをご紹介しましょう。

プレイ・モードとエディット・モード

まずは基本的な設定方法から見ていきましょう。ES-8はBOSSのマルチ・エフェクター=GTシリーズなどと操作手順が似てますので、BOSS製品を触ったことがあれば、基本的な操作はマニュアルを見なくても簡単に行えるはずです。さらに、ES-8はエフェクトのOn/Offや接続順序、簡易なコントロール・アサインなどはエディット・モードに入らなくても行えるようになっているんですね。本体の[ DISPLAY/EXIT ]ボタンを押すと、次々に画面が切り替わっていきます。パラメーターを表示するだけでなく、カーソル&「+&-」ボタンで設定を変更出来るというわけです。



・パッチ・ネーム画面


これが基本の画面。パッチ毎にテンポを設定することができます。パッチネームの変更は [WRITE]ボタンを押してから行います。


・Loop On/Off画面


各ループのOn/Offを表示/変更できます。


・Loop Structure画面


エフェクトの接続順やパラレル・チェイン(並列接続=複数のエフェクトをミックス)の設定を行えます。また、「キャリー・オーバー」という機能を使うことで、ディレイなどの残響を残したままパッチの切り替えが可能になります。

一連の流れを動画にしてみましたのでご覧ください。


その他に「コントロール・アウト」の設定画面があります。


クイック・エディット

ここまでの設定はボタンを手で押していましたが、足元に置いたスイッチャーを立ったままでエディットすることができる機能もあります。各エフェクトのOn/Offを行える「マニュアル・モード」が搭載されているスイッチャーは多いですが、ES-8は保存の操作までを足で行えるようになっているのです。これも動画で確認してみてください。


屈んだり、しゃがんだりしなくていいので、各エフェクトの組み合わせなどを演奏しながらテストできます。動画では先にスイッチを長押ししていますが、マニュアル・モードで設定後に [MEMORY/MANUAL]スイッチを長押しでもパッチの保存が可能です。


インプット&アウトプット・セレクト

2系統のインプット&アウトプットでギターの持ち替えや、アンプの切替を変更できます。フット・スイッチなどに切替をアサインすることで、ケーブルを差し替える事無く素早く聴き比べができそうですね。スタジオでJC-120とマーシャルのどちらを使うか、なんて悩んだ時などにも超便利!



バッファーとパッチ・レベル

スイッチャー本体のバッファー・アンプを、ケーブルの接続自体を変更すること無く、内部スイッチで切り替えられます。システム全体を設定することも、特定のパッチだけ変更することもできます。ヴィンテージ仕様のファズやワウ・ペダルなどを使う場合、バッファーを通した後に接続するとサウンドが変わってしまうことがありますが、ES-8ではそのエフェクターを使うパッチのみ、バッファー・オフに設定できるようになっています。


バッファーはインプット部とアウトプット部を別に設定できるこだわりの仕様。アウトプット・バッファーをOnにすれば、各パッチの音量調整もES-8側で行えます。


個人的にこのモデルを使って特に感心したのは、バッファー=On時のサウンドに劣化が認められなかったこと。低域や高域のロスが全くありません。通常使用ではOnで使うことを推奨します。やりたいことを妥協せずに、数多くのエフェクターを使えるのがメチャ嬉しいです。


ボリューム・ループ

ボリューム・ペダルを接続できます。ES-8ではこのループの接続順さえパッチごとに変更出来るので、あるパッチでは歪みの後段に接続して音量調整に、また別のパッチでは最前段に設定してボリューム奏法や歪みの深さをコントロールしたりできます。

また、このループはフット・ボリューム以外のものを接続してもOKです。僕はライブではFV-30Lなどを使うつもりですが、自宅ではジャンクション・ボックスを経由して、第9のループとして利用しています。

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ちょっと長くなったので、強力なコントロール&アサイン機能や、MIDIなどの仕様については「その2」として書くことにします。暫し待たれよ〜。