2013年7月20日土曜日

フランジャーに翻弄された日々

これからエフェクターに関する思い出なども、ときどき書いてみたいと思ってます。少々、マニアックな内容ですが…。

1970年代中盤にギターを始めた僕のような世代にとって、次々に発売される新しいエフェクターは非常に魅力的に見えました。今のようには情報は多くありませんでしたが、手探りで1つ1つ使い方を覚えていくのも楽しかった!

フランジャーとは?

かつてほんの少しだけ音を送らせ、ピッチをランダムに揺らした音を原音とミックスするレコーディング・テクニックがありました。それは1960年代にテープレコーダーを改造することで得られる効果で、ビートルズのレコーディング時に発明され、その機材はジョン・レノンによって「フランジャー」と命名されたという説もあります。「Tomorrow Never Knows」や「Strawberry Fields Forever」などのボーカルに使用されていることで有名です。ツェッペリンの「Kashmir」という曲のドラムにも効果的に掛けられています。

コンパクト・エフェクターとしてフランジャーが登場したのは1970年代になってからでしょう。

初めてのフランジャー

70年代の終わり頃、マクソンのFL-305というモデルを買いました。ツマミの数は5個(ディレイ・タイム、スピード、ウィドス、リジェン、ディレイ・レベル)。当時、それぞれの役割については全く理解できませんでした。適当にセッティングすると、「ジョワーン」とした金属的なうねりが得られます。先に買っていたフェイザーが「ショワーン」という音だったので、より過激な音に感じましたが、イマイチ使いどころが見つけられず…。(写真はこちら

フランジャーのパラメーターの役割を知ったのは80年代に入ってから。同じくマクソンのラック型デジタル・ディレイ「DM-1000」を買って、ディレイのモジュレーションを使用することでフランジャーやコーラスの効果を得られることを知ったのです。「リジェン」は「フィードバック」のことだったのね。

80年代の中頃にBOSSの「BF-2」と世界初のコンパクト・タイプのデジタル・ディレイ「DD-2」を購入して使い始めました。個人的にはBF-2はダブリングやコーラスの代用として、言わばジョーカー的な万能エフェクターとして使用していたのです。


BOSS BF-3

BOSSの現行モデルは「BF-3」といって、通常のフランジャー効果に加えてより過激な「ULTRA」やトレモロ的な「GATE」なんていう面白いモードも用意されています。


エフェクターや電子楽器の世界では、同じ機能なのにパラメータ名が異なっていることがあって、混乱させられることも多いですね。ここで、用語をまとめておきましょう。

・Rate・・・Speedと同意。モジュレーションの速さを設定する。

・Depth・・・Widthと同意。モジュレーションの深さを設定。

・Resonance・・・Regen.やFeedbackと同意。掛かり方を強調できる。これを最小にするとコーラス的な効果が得られる。

・Manual・・・Delay Timeと同意。数ms〜数十msまでを設定。BFシリーズの場合、反時計回りの方が大きいディレイタイムになることに注意。Depthを「0」に設定してこのツマミを動かすと手動フランジャーのようになることから「マニュアル」と名付けられたのでは?


2台のBF-2

前モデルのBF-2に「ノブの形状やロゴ・フォントの異なるモデルが存在する」というのを知ったのは、シンコー・ミュージックから出ている「ボス・ブック」を読んだ時でした。そういえば「BF-2」が我が家には2台あったことを思い出して並べてみたところ、確かにルックスが違うのが確認できました。右の黒いノブのモデルの方が初期型なのだそうです。知らなかった〜。


何故、家には2台のモデルがあるのかというと、80年代に僕が買ったものに加えて、ベースを弾いていたカミサンが持ってたものがあるからなんです。果たしてどっちが持っていたのが古い方か?と思ったのですが、すぐにわかりました。右の初期型モデルにはいつの間にか落書きが…。


2013年7月14日日曜日

エレクトリック・シタールって知ってますか?

一見、普通のエレキギターのように見えますが、特殊なブリッジを搭載することで、インドの民族楽器シタールのようなサウンドを得られるのがエレクトリック・シタールです。本物のシタールは演奏するのが難しそうですが(僕は弾いたことありませんけど…)、基本的にはエレキギター同様のチューニングと弾き心地なので、ギターが弾けるなら簡単にプレイできるのが特徴です。


この楽器は60年代に登場して以来、様々な作品で使用されています。フィラデルフィア・ソウルのTHE STYLISTICSの代表曲「誓い(You Make Me Feel Brand New)」とか、プログレッシヴ・ロックのYES「危機(Close To The Edge)」、Steve Vaiのバラード曲「For The Love Of God」なんてところが有名です。どちらかというとエスニックなニュアンスのサウンドで使われることが多いこの楽器ですが、80年代にジャズ・ギタリストのパット・メセニーが名曲「Last Train Home」で美しいサウンドを奏でたことでも注目されました。


それでは各部分の説明をしてみましょう。因みにこの実機は借り物です。


この楽器のサウンド秘密はブリッジの構造にあります。この写真の左側の細い金属製の部分がブリッジで、その右側にある黒い樹脂製のパーツが、弦が振動するとわずかに触れることによってビビリ音が得られます。右に見えるピックアップはリップ・スティックと呼ばれるPUが搭載されていますが、これは構造的にはエレキギターのピックアップと同じものです。


本体上部には共鳴弦が張られており、各弦はクロマチックでチューニングされています。こちらもピックアップで収音されるようになっていますが、普通に演奏した感じではほとんど鳴らすことができず、関係なさそうな気もします。


コントロール類はそれぞれのピックアップに対するVOLUMEとTONEで至って普通。 これで共鳴弦だけを生かして弾いても音はほとんど聞こえなかっただす。


自分でデジカメを使って撮影した映像をYou Tubeにアップしてみました。聴いてみてください。(実はこれをやってみたかった…)後半では敢えて共鳴弦を弾いてみました。


さて、Rolandのモデリング・テクノロジーを搭載したVGストラトキャスター=「G-5」なんですが、このエレクトリック・シタールのサウンドがバッチリ再現できるんです。「M」ツマミを【A(アコースティック)】に設定して、ピックアップ・セレクターを上から2番目(ストラトでいうとフロント+センターポジション」にすればOK。


映像で本物と聞き比べてみてください。どちらもアンプはMicro CUBE GXで「JC CLEAN」で鳴らして、音はCanon のカメラ「Power Shot S95」内蔵のステレオ・マイクによるものです。


ね?かなりそっくりなサウンドでしょう?最近のJ Popなどでも使用されることの多いエレキ・シタールのサウンド。でも、この楽器を買うほど欲しいというわけでもない自分にとっては、G-5に搭載されているのはうれしいところ。


このG-5。GKピックアップを搭載することでこのようなことが可能になっているのですが、世間では「ギター・シンセサイザー」だと思っている人がまだまだ多いようです。そういえば、このブログではG-5のレビュー記事を書いたことがなかったので、後日にまとめて書くつもりでいます。あと、You Tubeへのアップのやり方もわかったので、今後はこんな映像もアップしていきたいと思ってます。ご期待下さい!

2013年7月6日土曜日

「MICRO CUBE GX」私的レビュー

先日のTokyo Guitar Show 2013の開催に合わせて、ギターアンプ=CUBEシリーズのリニューアル・モデルが発表になりました。発売はまだのようですが、いち早く試奏させていただいたのでレビューを書くことにします。今回は「MICRO CUBE GX」!


今回も3色がラインナップ。僕はホワイト・トーレックス的な白が好きなんですけど、赤も人気があるみたい。いずれにしても選択可能なのは嬉しいですね。TGS 2013でも試奏される方が特に多かったようです。前回のブログ、Tokyo Guitar Show 2013時のレポートはこちらからどうぞ!「ありがとう!Tokyo Guitar Show 2013


前モデル「MICRO CUBE」(以下無印)は発売されて以来、ミニアンプのロングセラー・モデルとして多くの方に愛されてきました。僕自身も長年愛用してきた製品であることは、度々このブログでも言及している通りです。自宅用アンプは小さい音量故に、アンプの再生音とエレキギターの生音がミックスされた状態でサウンドが耳に届くところを考慮する必要があります。MICRO CUBEは音が良いだけではなく、レーテンシーがほとんど無く、音が荒れないところも気に入ってます。

それでは、今度の新製品がどう進化したのかを見てみましょう。スペック的なことはローランドのカタログ・ページでご確認ください。

http://www.roland.co.jp/products/jp/MICRO_CUBE_GX/

前モデルとの比較
MICRO CUBE GX(以下MCGX)と旧MICRO CUBE(無印)を比較してみましょう。まずは外観から…。


サイズはわずかに大きくなったものの、重さは500g軽量になりました。でも、実際に持った感じはそれほど変わった感じはありません。

「無印」では電子音叉だけでしたが、クロマティック・チューナーが搭載されました。電源スイッチが上部パネルに移動したのも地味ながら好印象です。


アンプタイプが1個増えて7個に。「EXTREME」は高域のエッジ感の強いハイゲイン・サウンド。リフ〜リードまで使用オッケー。エフェクト関連では「Heavy Octave」、「Spring Reverb」が追加になりました。

メモリー機能を搭載。パラメーター自体がそれほど多くないので、要らないという人もいるかもしれません。でも、特定の楽曲を練習する時に「コーラスが掛かったクリーン」から「ディレイのみが掛かったハイゲイン」なんていう、マルチ・エフェクター的な音色切り替えができるのは便利かもしれませんよ。


iCUBE LinkによってiOS機器のオーディオ・インターフェイスとして使えます。iアプリ「CUBE JAM」やサード・パーティー製のアプリを使用しての録音/再生が可能です。

実際に鳴らしてみた



・サウンドの印象
パワーが上がったような。ちょっとした野外のライブでもいけそうです。音量が大きくなっただけでは無くて、余裕で鳴ってる感じが良いです。旧モデルは少しくすんだようなサウンドだったのですが、全体的にブライトで明るい音になったかも。

各アンプタイプのキャラ自体は変更は無さそう。追加された「EXTREME」は前述のように、ザクザクとしたエッジとファットな中域を兼ね備えたサウンドなので、ハイゲイン系のリードを弾きたいユーザーにとってはメリットがあると思います。

無印が床置きの方が音が良かったのに対し、MCGXはデスクトップでも使える音。レンジがやや広くなったことで、宅録のマイク録りでも活躍しそうです。

・歪みエフェクターとの組み合わせ
エフェクターとの組み合わせもバッチリ。「Classic StackをSD-1でブースト」は前モデルでも良かったですが、コントロールの幅が広がった感じがします。いろいろな歪みを試してみたくなります。


・操作性
Master Volumeが搭載されました。ギターアンプ側のVolune設定を変えても音色の変化はあまりないので、これはギターアンプと外付けのiPhoneなどの音量を調整するために搭載されているようです。自宅で使うなら、アンプ側は上げ目にしてMasterで音量調節するとバランスが取りやすいと思います。
また、「無印」は小さい音量を調整するのがやや難しかったのですが、MCGXはレベルの微調整が格段にやりやすくなりました。


CUBE Liteとどちらがお好み?
これから購入を検討している方は悩むところかもしれませんね。CUBE Liteとの相違点をまとめると以下のような感じです。(以下Lite)


・サウンド
「Lite」はステレオ・スピーカー&サブウーファーを搭載しているので、 iCUBE LinkやAUX Inを使用してCD音源などを鳴らす場合には音質的なアドバンテージがあります。一方、床置きしてギターアンプ的な音を期待するならやはり「MCGX」が良いです。

・バリエーション
個人的には歪み系アンプのサウンドは「MCGX」の方が好みでした。また、「Lite」のエフェクターはコーラス or リバーブだけなのに対し、「MCGX」は多彩なモジュレーション系と空間系が独立して使えるので、アンプだけで手軽にバリエーションを楽しめるところも良いですね。

・仮想JC-120として
どちらも使用可だが…。小音量時のアタック感は「Lite」が上。なので、個人的にはコンパクト・エフェクターの使用が前提ならCUBE Liteが好みかも。

・電源方式
「Lite」はACアダプター必須。従って、部屋を頻繁に移動したり、外に持ち出しの場合はバッテリーが使えるMCGXが◎。誰もいない河原や山奥などで鳴らしたら面白いかも。やってみたい!

・音量
スペック的には「Lite」の方が上に見えますが(10W)、聴感上の音量は「MCGX」(3W)の方が大きい音を鳴らせます。ストリートやパーティーなどで演奏する時は後者を使った方が良いと思います。

CUBE Lite発売時のレビューはこちらから。合わせてご覧下さい。

http://yutakanakano14.blogspot.jp/2013/02/cube-lite.html

CUBE-80GXのレビューも近日中にアップする予定です。

2013年7月1日月曜日

ありがとう!Tokyo Guitar Show 2013

東京ギター・ショー2013、無事に終了致しました。毎回多くの方にご来場頂いているのですが、特に今年は凄かったですね。楽器や音楽を愛する皆さんの思いがヒシヒシと伝わる、そんな楽しいイベントになりました。ありがとう御座いました!


ロバート・マルセロ
マルセロには久しぶりに会いました。相変わらずもの凄いテクニックなんですが、以前より更に幅広いスタイルを吸収して凄みが出てきたような。リニューアルされたCUBEシリーズを使って、ロックの名曲のフレーズを織り交ぜながら、多彩なサウンドを聴かせてくれました。写真はちょっと小さくてわかりにくいけど、それくらい当日はお客さんで一杯だったということです。


陽気で80年代のロックが大好きなマルセロは、普段もメチャクチャいい奴です。何度もスイープ・ピッキングのやり方を教えてくれるのだけど、僕は未だにできないまま。少しくらいはできるように練習しようと思う反面、他にもできないことが多すぎて、やるべきことも多すぎです。頑張らないと、ですね。

人伝に聞いた話では「ナカノさんはシャイね〜」と思われているらしいが、ロバート、それ違うから。「オレの英語力の問題です」。

出演バンドから刺激を受ける
若いバンドの皆さんから学ぶべきことも多かったですね。「快進のICHIGEKI」、「Gacharic Spin」、「FLiP」と、今年は3バンドが出演しましたが、どのバンドもステージに臨む姿勢が真剣そのもの。もう、歌や楽器の演奏が巧いのは当たり前で、凝った演出やお客さんの煽り方もスゴイ。まあ、僕にはとても真似できませんが、姿勢だけは失わないように心掛けようと思います。

今回参加のギタリスト4人で写真を撮りました。左からV-GuitarやJS-10のデモなどを担当した山口和也君、快進のICHIGEKI_久雄さん、SONAR X2の担当、関秀樹君、そして私です。今年の出演者の中では僕がダントツの年長者。みんな若くてカッコいいね。一緒に写真を撮ってくれてありがとう!


で、今年の私の出し物は?
前回のエントリーで書いた通り、コンパクト・エフェクターを組み合わせて、様々なサウンドを聴いて頂きました。今年、発売されたDA-2、MO-2、TE-2に加えて、FB-2、PS-6、CS-3、PH-3を組み合わせて音を作ってみたんですけど、本当にいろいろなサウンドが得られるので自分でもぶったまげましたよ。当日、お聴かせできなかった方々にも、何らかの手段で是非聴いて頂きたいと思っています。ご期待ください。


いつもながら、客席の皆様がとても暖かく聴いてくださるので、気持ち良くプレイすることができました。本当に感謝しています。機会があれば是非また聴きに来てください!


試奏コーナー
人が演奏しているのを見ると自分でも楽器を弾きたくなるでしょ?このイベントはその欲求を満たしてくれます。ギターやエフェクター、アンプなどのRoland/BOSSのギター関連製品からV-Drumまで試奏できるんですから。真の主役は来場していただいた皆さんです。


一新されたギターアンプのCUBEシリーズも、間も無く発売が開始される予定です。僕も試奏させて頂いているので、近日中にこのブログでレビューします。

当日は、BOSSのコンパクト・エフェクターが100機種目を超えたということを記念して、歴代のヴィンテージ・モデルも展示されていました。ラッキーなことにほぼ全機種を弾いたことがあるので、そんなこともいずれ書いてみようと思います。


再会の日
僕にとっては、いろいろな方との出会いや再会もあった今回のイベントなんですが、高校生の時にギターを教えて頂いていた永井充男先生が会場にいらしてビックリ!約25年ぶりに再会しました。何より、僕のことを覚えていてくださったことに感激しました。当時のことは以前のエントリーに書いているので、よかったら読んでみてください。(楽器を教わるということ

アピール、アピール!
最終日の演奏も終わり、リハも含めて3日間を過ごしたベルサール渋谷ガーデンから、楽しかったいろいろなことを思い出しながら、ギターケースを背中に担いで帰路につきました。「エフェクターが面白いってことはアピールできたかな?」なんてことを考えながら。で、渋谷の街中や地下鉄の中で、「自分が中野豊である」ということをアピールして歩いていたことに気が付いたのは、それから1時間後の京葉線新木場駅のホームでのことだったのです。(笑)