2015年6月23日火曜日

SY-300〜発売直前レビュー

いよいよ今週末に発売されるギター・シンセサイザー=SY-300。従来のモデルとは異なり、GKピックアップを必要とせず、本体だけでシンセ・サウンドを楽しめる画期的な製品です。まずは僕が演奏を担当しているビデオをご覧ください。


ビデオで確認できるように、普通のギター奏法に全く問題無く追従します。コード演奏が可能なだけでなく、カッティングの空ピックも再生できますし、ピッキングの強さなどで音色がシームレスに変化していることに注目!しかもレーテンシーは全く感じられません。複数のオシレーターを重ねて発音させることもできるので、ビデオの冒頭のような「チュンチュン」としたシーケンサー風フレーズと、コード・サウンドを同時に鳴らすことが可能なんです。どうしてこのようなことが可能なのか、技術的なことは僕もわからないのですが、今までの常識が覆されてしまうような新鮮な弾き心地です。


「GR-55」はGK-3などのディバイデッド・ピックアップを使用して、各弦毎にピッチ検出を行い、内蔵のPCM音源をならす仕様。一方、「GP-10」は同様のピックアップを使って、モデリングされた多彩なギター・サウンドを楽しむことをメインとしたモデルです。それに対し、SY-300は通常のピックアップ搭載のギターを使いつつ、存在感のあるアナログ・シンセ風サウンドを手軽に楽しめる製品というわけです。

因みにこのビデオ、僕の自宅の作業部屋での「自撮り」なんです。本編はモノクロで良い感じの雰囲気に仕上がっていますが、実際は普通の部屋で普通に演奏・録音しています。事前にオリジナルのオケを作成し、本番に臨みました。


SY-300オフィシャル・サイト→http://jp.boss.info/products/sy-300/

SY-300の中身

それでは、SY-300のディスプレイを見ながら中身を見てみましょう。「SYNTH/FX」ボタンを押すと次のようなエディット画面に切り替わります。左側に【OSC】とありますが、これが「オシレーター」と呼ばれるセクションでここのパラメーターを変更することでさまざまな音色を作っていくことができます。3個のOSCを組み合わせてサウンドを構築することが可能です。

・オシレーター
各OSCでウェーブ・フォームを選択します。「正弦波」とか「矩形波」とかいうヤツですが、シンセサイザーの基本がわからないという方は、齋藤久師さんによる「GAIA」というシンセサイザーの解説を読んでみてはいかがでしょう。とてもわかりやすく書かれているので参考になると思います。以前、僕自身もこれでシンセの基本を理解することができました。


加えて、SY-300ではギター信号そのものをオシレーターとして利用することも可能になっています。(但し、ピッチ系パラメーターには制限あり)



・フィルター/アンプ
フィルターはシンセらしいサウンドに仕上げるには欠かせないパラメーターです。最もよく使われるのは【LPF(ローパス・フィルター)】でしょう。【CUTOFF】でカットするポイントを指定し、【RESO(レゾナンス)】でクセを強調します。


・LFO
これはギタリストでもわかると思います。周期的にパラメーターを動かすことで効果を得るためものですね。音量(=AMP)を周期的に変化させれば「トレモロ」とか。


・シーケンサー
自分で弾いた音をきっかけに、指定した音程でシーケンス・パターンを生成できます。勿論、テンポを変えることも他の楽器やDAWと同期して鳴らすことも可能です。バンドに機械的なフレーズを加えるのに打ってつけな機能。


・エフェクター
4系統のエフェクターを自在に組み合わせて使うことができます。実際には空間系は「CHO&DELAY」などのように複合エフェクトも何種類か搭載されているので、さらに多くのエフェクターを掛けられる仕様です。どのオシレーターにどのエフェクトを掛けるかのルーティングも自由自在です。


ユニークな「BLENDER」機能

「BLENDER」ボタンを押すと、既に存在するパッチのOSCを抜き出し、ランダムに組み合わせることができます。「AUTO」を使えば、まるでスロット・マシンのように勝手に組み合わせを選んでくれたりもします。偶然性を狙って次々に切り替えて音出しすることで、思いも寄らない奇抜なサウンドに出会えるかもしれません。こりゃ面白い!



他にも、GTシリーズでもお馴染みの、「ウェーブ・ペダル」などを含む多彩な「コントロール・アサイン」や、パッチごとに凝ったルーティングを設定可能なアウトプット・アサイン、可能性を拡張できるUSB/MIDI機能を搭載。さらには、PC/Mac用のエディター/ライブラリアンも用意されています。


よりギターに近い弾き心地でありながら、従来のギターとは全く異なったサウンドを作りだすことができるSY-300。PCMシンセの代用としてではなく、新しいギターサウンドを構築するためのツールとして使ってみてはどうでしょう?つまり、よりエフェクター的な発想でSY-300を使用することも可能なモデルと言えるでしょう。コンパクト・エフェクターやギターアンプと組み合わせたらさらに面白いかも。僕もこれからいろいろ実験してみるつもりです。