2015年1月25日日曜日

Blues Cube Artistレビュー

世界最大の楽器ショー、Winter NAMM 2015が開催されています。各社から新製品が続々と発表され、今年は個人的にもワクワクさせられるモデルが出品されているように感じます。Roland/BOSSの多くの新製品が発表になりました。今のローランド、勢いがありますね。

「Blues Cube Artist」を以前にライブで使ってみたよ〜、というご報告はさせて頂いていましたが、そろそろ発売になりそうなので、追加レポートを書くことにします。


Blues Cubeの概要

これまでのCUBEシリーズなどのような「JC Cleanからハイゲインまでをモデリングした」製品ではありません。基本的にはCleanとCrunchの2ch仕様。名機として知られるような真空管アンプのサウンドを徹底的に追求した製品なのです。

CLEANチャンネルも【VOLUME】を上げていくと少しづつ歪んできます。でも、ただ歪むんじゃなくて、絶妙なコンプレション感が加わってくるのが特徴。一昨年、マーシャル・ミュージアムでプレイしたヴィンテージのチューブ・アンプの弾き心地が甦りました。「音が太い」のは勿論、「弾きやすさ」というところを是非体感してみてください。

Crunchチャンネルのサウンドはそれほど深い歪みではなく、クランチ〜ナチュラル・オーバードライブ的なサウンド。「Boost Sw」や「Tone Sw」なども搭載されていますし、コンパクト・エフェクターなどを組み合わせれば、さまざまなバリエーションを生むことができるでしょう。その辺りに関しては、僕自身ももう少し研究してみたいところです。


詳しいスペック等は公式サイトをご覧ください。

自宅で使ってみた

家に持って帰るときに驚いたのはその軽さです。ギターアンプというと、腰を痛めてしまうほど重いというモデルも多いでしょう?でも、このアンプ、サイズ的には80Wアンプ相当の大きさにもかかわらず、持ち運びが全く苦になりません。ツアーケースに入れてのクルマへの積み下ろしも楽勝!


防音されていない普通の部屋では15ワットのアンプでさえ鳴らすのは難しいですね。チューブ・アンプも含め、何台かのアンプを所有していますが、自宅で使うのはもっぱら、「Micro Cube」や「Cube Lite」だったりします。このBlues Cubeには「POWER CONTROL」という機能があって、音色を変えずに音量だけを下げることができるんです。ギターアンプって音量を調節しただけで音色も変わってしまうものなんですが、これは前述したコンプレションなどによる弾き心地を維持したまま、適切なレベルにすることが可能なんです。


「0.5W」に設定すれば、普通のマンションの部屋でも無理なく鳴らせます。実際にプレイしてみると何とも不思議な感じです。自宅では味わったことの無いような心地良いサウンド。これは楽しい!!

ライブでも使ってみた

先日のZeroさんのライブ・ツアー。以前にもレポートしましたが、Cleanチャンネルのみを使用し、コンパクト・エフェクターを組み合わせる方法を採用。本体のリバーブもクリアでとても使いやすいサウンドでした。


CleanとCrunchの両方のサウンドをミックスする「DUAL TONE」や空間系などを接続できる「Send/Return」など、今回のライブでは試せなかった機能がありましたが、非常に可能性を感じます。いずれじっくりと実験するつもりです。


この写真、ちょっと変わってるでしょう?左側が客席側なのですが、ギターアンプが真横を向いています。実は東京(中野サンプラザ公演)のみ、ストリングス・セクションの皆様と演奏することになっていて、彼らの席は僕の立ち位置の正面にセットされていたのです。バイオリンなどをマイク収音している方に向かってアンプを鳴らしたら音が被ってしまいますし、何より弦の方々の演奏に支障が出るのは必至。そこでこんなセットアップになりました。


こんな状況でも役に立ったのが前述した「POWER CONTROL」機能。実際にリハが始まって、もっと音量を下げる方が得策と思い、設定を「45W」に。


僕自身はイヤモニを使っていたので、爆音を鳴らす必然性は皆無。モニターで聴く限り、音色が全く変わらないことが確認できました。もし、真空管アンプだったら音色をキープすることは難しかったかもしれません。

そして何と、エリック・ジョンソン

新たに「Tone Capsule」という機能が紹介されました。これはチューブ型のカプセルをBlues Cubeに挿すことによって、エリック・ジョンソンが監修したアンプ・サウンドに切り替えられるというスゴイ機能。エリック所有のヴィンテージ・フェンダーやマーシャルのサウンドが手に入れられるってこと?これは大いに期待したいところですね。ビデオもどうぞ。


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BOSS関連の新製品も、スイッチャーの「ES-8」を始め、ベース用エフェクターの「BB-1X」などが注目を集めているようです。これらもBOSSの開発チームがこだわり抜いて設計したモデル。ハッキリ言って予想を上回る仕上がりになっています。後日、こちらもレビュー予定です。お楽しみに!!

※誤表記があったため、文中の一部を削除しました。(1/26)

2015年1月16日金曜日

一家に1台~Session Mixer HS-5レビュー

昨年の楽器フェアでのHS-5。僕のデモでは単なる複数のヘッドホンが接続できるヘッドホン・アンプとしてしか使っていなかったのですが、今回、ローランドさんからお借りして自宅でじっくり触ってみました。今までにありそうで無かった、想像以上にいろいろなことができる機材ということがわかりました。順を追って使い方を解説していきましょう。



HS-5のセットアップ

HS-5はヘッドホンを使用して、複数のプレーヤーが同時に楽しく演奏することができる製品です。A~Dまで独立したヘッドホン・アンプ4人分、メイン・アウト用のヘッドホンを含めれば同時に5人以上での演奏が楽しめます。

「A」のインプットにギターを接続するとします。リア側にインプット端子があり、マイクを接続できるXLR端子も用意されているのが見えますね。シンセなどをステレオで入力することも可能。マニュアルには書いてないのですが、こちらの実験ではギターとマイクの両方を同時接続することも可能のようです。


Aのプレーヤーは「A」に、Bのプレーヤーは「B」にヘッドホンを接続します。標準とミニのジャックが両方用意されているのもありがたいところ。(これも同時接続OK)

次に【INPUT】ボタンを押して接続した楽器のインジケーターをセレクトします。これによって、それぞれのパートに相応しいエフェクターが自動的に選ばれます。


「GTR」を選んだ場合は、GTシリーズなどでもお馴染みのCOSM AMP=JC-120、フェンダー、VOX、マーシャル、ヒューケトなどのモデリング・アンプ・サウンドをを切り替えて使うことができます。「BASS」や「MIC」を選択すれば、コンプやディレイなどを含む、ベース用やヴォーカル用などのマルチ・エフェクターが立ち上がります。

因みにエフェクトのタイプ切替は【INPUT】ボタンを押しながら、上部の【A】ノブで変更します。また、【INPUT】を長押しすることで上部の【A~E】ノブでパラメーターを変更するモードに移行します。「GTR」の場合はノブの下に表示されている「GAIN」や各トーンの調整が可能です。


CUEボックス機能

それぞれの楽器のセットアップが完了したらすぐに演奏を開始できます。ヘッドホン端子の音量は充分。普通のヘッドホンなら12時以上にすることは無い感じ。音質もバッチリです。このモデルの最大の特長は各人のヘッドホンのバランスをプレーヤーの好みで自由に設定出来るところ。【MY MIX】で自分の楽器レベルとその他のプレーヤーのレベルを簡単に調整できます。これができる機材はあんまり無いんですよ。


プロのレコーディング・スタジオには「キューボックス」と呼ばれるヘッドホン・アンプが人数分置いてあり、リズム録り(バンドで一斉に演奏)のときに必ず使います。HS-5はこの機能が1台に集約されているというわけです。


また、サブ・ミキサー機能を使うと更に細かい音量調節が可能で、他のプレーヤーのモニター・バランスに影響を与えずに、「ドラム大きめでベース小さめ」なんていう自分用ミックスが簡単に作れます。多機能なミキサーと5台のヘッドホン・アンプが無いとできないことが、これ1台でできてしまうのです。(下の写真はメイン・ミキサー画面。メイン・ミックスの他に4種類のサブ・ミックスを作ることができます)


演奏しやすいように【REVERB】を掛けるのも簡単。各セクションの専用ツマミを上げるだけです。

あと、【MIX A~D】ボタンを長押しにすることで、「SOLO機能」を有効に出来ます。自分のヘッドホンに自分の音だけを返し、他の楽器の音をミュートすると同時に、他のプレーヤーのヘッドホンには自分の音を出力しないようにできます。チューニングしたり、自分の苦手なフレーズだけを繰り返し練習したい場合に便利に使えます。至れり尽くせり!

メインから適切なバランスでスピーカーなどに出力しつつ、イヤモニで各人が演奏しやすいモニター環境を構築できるので、プロ顔負けのライブ用PA機材としても使えそうです。

中野家では

我が家のカミさんは元ベース弾き。HS-5が家に来たことでベース熱が再燃しちゃいました。最初はギターとベースと内蔵のクリックだけで、そして、USB端子にMac Bookを接続して簡易なドラム・パターンを流してのセッションで盛り上がります。そう、HS-5はオーディオ・インターフェイスとして使うこともできるのです。それなら、ということで、演奏したいという曲のドラムやピアノなどをササッとコピーしてDAWに打ち込んでみたら、楽しさが倍増!!



DAW側から見た場合、HS-5の各パートは独立したInputとして認識します。Input1&2=「A」、Input 3&4が「B」~という風になりますので、トラックに分けて録音することができるんです。(2Mixでの録音も可)


だから、ギターの録音が終わってしまっても、納得いくまでベースだけ繰り返し練習、録音も可能ということ。「あのう、もう夜の11時過ぎてるんですけど…」といった場合も近所迷惑にもならないので、ガンガンイケるってわけです。


2人以上で演奏する機会があるのなら、持っていたらかなり楽しめる製品でしょう。

バンドで使うなら

バンドなどを組んでいる方なら、ヘッド・アレンジなどの作業を、スタジオ代を気にせず自宅で、しかも静かに行うことができます。V-DrumやHand Sonicなどがあったら最高でしょうね。また、本機にUSBメモリーを挿すことで、PCを使わずに演奏をそのまま録音、再生することも可能です。



バンドで一斉に演奏したときにだけに生まれる「魔法」を経験した人も多いのではないでしょうか?HS-5ならいつでも気軽に演奏できるので、そんな瞬間を何度も味わえるかもしれませんよ。

HS-5の公式プロモーション・ビデオ。この製品の楽しさをうまく表現しています。是非、ご覧ください。


2015年1月12日月曜日

お宝エフェクターの世界

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。今年も楽器の話を中心にボチボチ、ブログ書いていきます。

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映画「FUZZ」

今から5年くらい前、「歪み系エフェクター、それもファズをテーマにした映画が公開になる」なんて話は聞いていたものの、その存在をすっかり忘れていました。Amazonで検索を掛けたらすぐに見つかり、しかもマーケット・プレイスで中古が安く出品されていたので購入してみました。いやぁ、これはギターも弾かず、エフェクターに興味が無い人には絶対勧められないマニアックな映画ですね。「下に恐ろしきかな、コレクターの世界」といった案配ですが、僕にとっては大変面白い作品でした。エフェクターを使うミュージシャンだけでなく、開発者やディーラーなどが多数出演して、エフェクターに対する愛憎を語り尽くします。


エフェクターを買う動機は人それぞれ。

1. 自分の音楽を表現するのに必要だから
2.   そのモデルが流行っているから(好奇心から)
3. コレクションとして

僕自身はエフェクターは大切な道具として捉えていたので、「1」の考え方。その時点で必要なモデルを買って、不要になれば処分するというスタンス。でも、最近は仕事柄、売れていたりスタンダードと言われる機種は試しておかないとね、という場合もあり。必然的に数が増えてくると「3」の気持ちも少しわかるようになってきました。

ファズ・コレクション

そんなわけで、有名どころのリイシューは一通り持ってますが、ヴィンテージ・ファズはほとんどありません。古いのは2機種のみ。

・Ace Tone FM-3
「FUZZ MASTER=FM-3」は1971年発表だそうですが、ギターを始めた1975年に新品で買いました。6,000円くらいだったと思います。マニュアルに「和音を弾いてはいけません」と書いてあったのですが、素直な高校生だった僕はコードを弾くとどんな恐ろしいことが起こるのか…、と心配していたことを思い出しました。


・Roland AF-100
1972年発売の「Bee Baa」と名付けられたこのモデルは、2種類のファズ・サウンドを切り替えられます。このモデルも高校生の時(77年頃)、PAのバイトで行ったチューリップのコンサートで、当時のローディーさんから貰いました。この写真のものはその個体ではなく、後日に別の方に頂いたものですけど。意外に普通に使えそうな音です。


機会があればどこかでそのサウンドをお聴かせ致しましょう。

Way Huge

エフェクター・ブランド「Way Huge(ウェイ・ヒュージ)」を主宰していたジョージ・トリップス氏も映画「FUZZ」に登場します。

以前にシンコー刊のムック「エフェクター・ブック」にこのブランドが特集されていたときに、「僕も1個持ってますよ」とシンコーの編集の方に写真を送ったところ、「それは希少なものだから、大事にした方が良いですよ」と言われたのが「Green Rhino」というオーバードライブ。


何でも、「TS系クローンの最高峰」(※註)とか呼ばれることもあるらしく、現在はジム・ダンロップ社からリイシュー・モデルも発売されています。僕は1995年頃にローランドのギターアンプ=(旧)ブルース・キューブをブーストさせるために、たまたまオリジナル・モデルを買いました。2万円位だったような。で、その当時の写真。ピントはボケてますが、足元にあるME-Xの中に緑色のモデルがあるのが見えるでしょうか?(写真クリックで拡大できます)


※TS系
日本の楽器ブランド、「Ibanez」が発売している「Tube Screamer」というオーバードライブと、そのコピーモデルの総称。主にフェンダー系アンプをブルージーにブーストできる製品として有名。型番や年代によって微妙にサウンドが違うといわれており、古いものは高値で取引されている。(って解説しても「意味不明!」か、「そんなこと知ってるよ!」という方に二分されそう…)写真はTS-9のリイシュー・モデル。



Way Hugeは、もう長い事使っていないのですが、他人からそんな風に言われると気になるもの。デジマートやオークション系サイトで調べてみたら、8万円を超える値段が付けられていて、しかもスグに売れてしまっていたのを見てビックリ。

オークション・サイトなどには、その個体の詳細なデータが出ています。製作年とかシリアル・ナンバーとか。あまり気にしたことなかったのですが、中を開けてみてさらにビックリ!


1995年10月のタイム・スタンプは最初期らしいのですが、シリアル・ナンバーは「002?」。2個目に作られたモデルっていうこと?何でそんな個体が日本に来てたの?いろいろ想像するだけでも楽しいです。(Way Hugeはアメリカのブランドです)

でも、ヴィンテージもののコレクションを趣味にしたらいくらお金があっても足りなさそう。オレはハマらないぞ!