2015年11月8日日曜日

BOSS PW-3 レビュー

 BOSSの新しいワウ・ペダル="PW-3"が発売になりました。ワウは多くのギタリストにとって必携のエフェクターですよね。今回のモデルは、前モデルの"PW-10"が2011年に生産完了になってから、長期の開発期間を経て登場しただけあって、非常にハイクオリティな製品に仕上がっています。主な特徴から見ていきましょう。


外見と概要

 BOSSブランドのワウ・ペダルには、1979年発売の「Rocker Wah」="PW-1"、1991年の"FW-3"(写真右)、2002年の"PW-10"(写真左)というラインナップがありました。


旧モデルと並べると、PW-3が非常に小型化&軽量化されているのがわかると思います。にも拘らず実際に使ってみると、床に対してグリップが安定しているので、踏んでいる間に動いてしまうようなことは全くありません。エフェクター・ボード内にも楽勝で収納できるサイズでもありますね。エフェクトのON/OFFのインジケーターは左右の側面の2箇所に付けられているので、足を上に置いている場合でも、どちらかのLEDが見えるので現状がすぐに確認できます。


前モデルのPW-10は、モデリングされたさまざまなワウ効果を切り替えられたり、同時に歪み系を使用することもできたのに対し、PW-3はシンプルなアナログ仕様のワウ・ペダルになっています。ペダルの可変幅も極めてワウらしい使い易い角度になっています。



同サイズのフット・ボリューム="FV-30L"と比較してみてください。


ワウ・ペダルのON/OFFスイッチは柔らかいと踏んでいる間に切り替わってしまったり、硬いと踏み損なってしまったりと調整が必要なのですが、搭載されているゴムを外したり、付属のゴム片を貼り付けるなどして調整できます。家で裸足で踏んだときに丁度良い硬さにしてしまうと、ライブで盛り上がったときに失敗しますから、自宅ではちょっとスイッチが切り替えにくい、と思う程度に調整するほうが良いと思われます。勿論、ペダルのトルクの強さも変更可能です。電池交換が簡単なのも地味に良いです。

VINTAGE MODEとRICH MODE

 このPW-3の最も優れているところはそのサウンド自身。パネル部のスイッチで2つのモードを切り替えられるようになっています。「VINTAGE」モードでは、額面通りのヴィンテージ・サウンドを手に入れることができます。写真の60年代の「VOX」製のワウとかなり似た質感に感じました。


実は、ジミヘンなどの時代のワウ・ペダル・サウンドにはちょっとした秘密があるんです。ギターから出力された高いインピーダンスの信号を直接ワウに接続したときと、モダンなエフェクター(バッファー内蔵のモデル)を通した後段に接続した場合とでは、動作や音色が異なることが知られています。これは、一部の古い設計のファズやワウだけに見られる現象なんですね。製品マニュアルに接続方法の図が記載されていますが、一般的なギター側の最前段にワウを接続する手法を示しているだけでは無く、このモデルの良さを引き出すためにこの接続順を推奨しているのです。
 しかも、バイパス時には上質なバッファーを通るようになっているので、直列時にエフェクトをオフにしても音が劣化してしまうこともありません。


どのように音が変化するかは、BOSSのスイッチャー="ES-8"の「インプット・バッファー・スイッチ」を使うことで簡単に実験できます。ES-8のループにPW-3を接続し、インプット・バッファーをオフにした瞬間にワウ・ペダルにありがちな耳に痛い帯域の音が削られて、ファットでマイルドな音に。こりゃライブで使うのが楽しみです!


ヴィンテージ・サウンドの追求だけではなく、従来のワウペダルの「低域が無くなってしまう弱点」を払拭した「RICH MODE」にも切り替え可能。バンド・アンサンブルの中でどちらが使い易いか、手に入れたら試してみてください。
 これらに関しての実験を自宅で行い、簡単な動画を作ってみました。こちらも是非、ご覧ください。


2015年10月29日木曜日

JCシリーズ40周年

 JCシリーズの最初のモデル"JC-120"が発売されてから今年で40周年なんだそうです。ギターを弾かない方に一応説明しておくと、「JAZZ CHORUS-120」というモデル名の名機JC-120は、日本中のどこのスタジオやライブ・ハウスにも置いてあるローランド社製のギターアンプのこと。「ジャズコ」と略して言う人もいますが、僕は「ジェーシー」と呼ぶのがクセになっていて、「最近、JC気に入っているんだよね〜」なんて公共の場所でうっかり言ってしまうと、別の意味にとられないかとヒヤヒヤします。


JCシリーズのラインナップにも、久々にニューモデルが登場。「JC-40」のレビューもこの記事の後半に書きましたので、併せてご覧ください。

JC-120の新旧比較

 40年前、1975年は僕がGreco製「EG-480B」を購入してギターを始めた年でもあります。JC-120が写っている昔の写真を探してみたところ、ハイありました。


これは1976年頃の写真で、高校時代に一緒にバンドをやっていたボーカルの高桑君とスタジオ常設の最初期型JC-120です。

40年間、ほぼ同じデザインとスペックを誇るJC-120ではありますが、現在のモデルとは微妙に異なっています。現在のJC-120のパネル部と最初期型を比べてみましょう。(上の写真が現在のモデル)



現行モデルの電源スイッチがプッシュ式なのに対し、旧モデルは「ピン型」ですし、コーラス/ビブラートのスイッチ形状も違います。よく見るとロゴのフォントやカラーも異なりますね。また、「CHANNEL-2」インプットにあるはずの「ブライト・スイッチ」が初期型にはありません。(これも上が現在のモデル)



他にも、スピーカー・ユニット自体は時代と共に変遷していますし、現在のリア・パネルに搭載されているような洗練されたセンド/リターン機能とは異なった仕様でした。

現在でも40年前と同じモデルが製造し続けられている理由は、サウンドそのものが評価されているということの証でしょう。クリーンでありながらアタックがしっかり再生されるこのアンプの特性は、アナログBBD搭載のコーラスとともに変化ありません。

JC-40登場!

 JCシリーズは、今までもいくつかのモデルが販売されていたこともありますが、最近はJC-120以外はラインナップにありませんでした。しかし、40周年記念(?)、40W仕様の「JC-40」がいよいよ発売になります。実際に弾いてみると、JC-120同様のキャラクターでありながら、JC120よりもやや中域にパワーを感じられるサウンドで好感が持てました。特に、歪み系エフェクターとの相性は抜群、どんなモデルを使ってもその特性をスポイルせずに再生できる印象です。特にBD-2系などとの組み合わせもオススメ!


JC-120の各コントローラーを踏襲していますが、エフェクト関係のスペックはやや異なっています。コーラス機能はJC-120の場合はパラメーターが固定なのですが、「MANUAL」というモードが追加されていて、【SPEED】と【DEPTH】で調整することも可能になっています。また、【DISTORTION】のサウンドはJC-120とは異なり、アンプライクなモダンな歪みが得られるようになっています。


僕がこのJC-40で特に気に入ったのは、インプットがステレオ入力が可能になったところです。ケーブルを1本追加するだけで、ディレイやリバーブなどのステレオ・エフェクターを1台のアンプで手軽に試せます。


昔の「PN-2」というモデルを使ってオート・パンを試してみました〜。


JC-40搭載のエフェクターのコントロールや、エフェクト・ループ、センド/リターンなど、リア・パネル側も充実。スイッチャーの"ES-8"と組み合わせたら、かなりいろいろなこともできそうです。これは、ライブでも使ってみたいアンプですね。11月7日から販売開始されるそうです。




JC-40のデモ・ビデオ

YouTubeなどで、この"JC-40"のデモ・ビデオが公開されていますが、このビデオの音楽制作も担当させていただきました。映像の中のプレーヤーは僕ではありませんが、実際はギターも僕が演奏しています。


某スタジオにて、自撮りならぬ「自録り」です。イヤモニ(Shure=SE535)でモニターしながら、ギターアンプの音を録るのにもすっかり慣れてきました。


この曲、ローランドさんからは「歪み系サウンドは使わないこと」、「リード・ギターは入れないこと」などと、厳しい条件(?)を頂いていたのですが、さすがのJCシリーズ、良い感じに仕上がったと思っています。テレキャス、ストラト、レスポールなど多くのギターを使い、"SL-20"のシーケンス風や"RE-20"の発振音なども交えてのレコーディング。ドラムとベース以外はギターパートだけでアレンジしています。その時にラフに撮影して頂いていた素材があったので、メイキング・ビデオ風の動画にしてみました。よかったらこちらもご覧ください。


2015年9月17日木曜日

技クラフト・シリーズのデモ・ビデオ公開!

ご無沙汰です。元気にしています。

おかげさまで、楽しくいろいろな仕事をさせて頂いています。今週からは執筆モードに入ってます。詳細が決まりましたら改めてご報告させていただきますね。

Waza Craft Series Demo

新規に5本のBOSSのデモ動画が公開されました。今回はその中の1本「Waza Craft Series」のデモ・ビデオをご紹介します。曲は昨年のイベントでは演奏していたものなんですが、「BD-2W」、「SD-1W」、「DM-2W」をフィーチャーして新たに録音しています。まずは動画をご覧ください。



このビデオ、前半はイメージ・ビデオ風ですが、後半ではフレーズごとにどんなエフェクター設定で演奏しているかがよくわかるような編集になっています(音声は同じです)。なかなか良いサウンドで録音できたと思っているのですが、いかがでしょうか?さすが、SD-1W & BD-2W、名機ですね。ちょいと解説してみましょう。

バッキングはブロンド(白)のストラトをBD-2Wに接続して「Blues Cube Artist 212」を鳴らしています。アンプはクリーン・チャンネルを使用。イントロだけDM-2Wを掛けています。DM-2Wらしいマイルドなディレイ音です。


前半のオブリ風のリードはギブソンのレスポール・カスタムをそのままBD-2WとDM-2Wを使用。BD-2Wの【GAIN】だけをやや上げ、バッキングと同様に「Blues Cube Artist 212」を使いました。特に苦労することも無く、図太いサウンドに録れました。録音にBlues Cubeを初めて使ってみましたが、BOSSの歪み系との相性は極めて良好です。

中盤からのリードは「サンバーストのストラト→SD-1W→DM-2W→マーシャル」というセッティング。マーシャルはリード・チャンネルを使い、この曲ではSD-1Wはブースター的に使っています。アンプ側が歪んでいるのにヒステリックな感じにならないのは、マイルドなSD-1Wとアナログ・ディレイのDM-2Wの組み合わせならでは、という部分にも注目して聴いてみてください。曲の最後にDM-2Wの発振音を入れたらイイ感じに仕上がりました。

撮影の裏側
いつもは、リハーサル・スタジオ的なところで撮影することが多いのですが、今回はレコーディング・スタジオのブース内に機材を置いての撮影。


音は僕自身が持ち込んだMacBook Proに直接録音。マイクの立て方もいつもとは違う方法で録ってみました。いつもはアンプの近くに立てた(オンマイク)ShureのSM-57をメインにほんの少しだけルーム・アンビエンス用マイクを混ぜる方法を採ってきたのですが、今回は音色によっては57の代わりにゼンハイザーのMD421を使いました。更に、オンにAKGのC414というコンデンサー・マイクの音も同時に録っておき、ミックス時に加えています。


撮影される被写体になりながら、自分で録音のオペレーションをするのは大変ではありましたが、非常に勉強になりました。


BOSSの新製品も続々と発売になっていますし、個人的にもブログに書きたいネタがいろいろと溜まっています。今後はボチボチ更新していくつもりなのでよろしくです!

2015年6月23日火曜日

SY-300〜発売直前レビュー

いよいよ今週末に発売されるギター・シンセサイザー=SY-300。従来のモデルとは異なり、GKピックアップを必要とせず、本体だけでシンセ・サウンドを楽しめる画期的な製品です。まずは僕が演奏を担当しているビデオをご覧ください。


ビデオで確認できるように、普通のギター奏法に全く問題無く追従します。コード演奏が可能なだけでなく、カッティングの空ピックも再生できますし、ピッキングの強さなどで音色がシームレスに変化していることに注目!しかもレーテンシーは全く感じられません。複数のオシレーターを重ねて発音させることもできるので、ビデオの冒頭のような「チュンチュン」としたシーケンサー風フレーズと、コード・サウンドを同時に鳴らすことが可能なんです。どうしてこのようなことが可能なのか、技術的なことは僕もわからないのですが、今までの常識が覆されてしまうような新鮮な弾き心地です。


「GR-55」はGK-3などのディバイデッド・ピックアップを使用して、各弦毎にピッチ検出を行い、内蔵のPCM音源をならす仕様。一方、「GP-10」は同様のピックアップを使って、モデリングされた多彩なギター・サウンドを楽しむことをメインとしたモデルです。それに対し、SY-300は通常のピックアップ搭載のギターを使いつつ、存在感のあるアナログ・シンセ風サウンドを手軽に楽しめる製品というわけです。

因みにこのビデオ、僕の自宅の作業部屋での「自撮り」なんです。本編はモノクロで良い感じの雰囲気に仕上がっていますが、実際は普通の部屋で普通に演奏・録音しています。事前にオリジナルのオケを作成し、本番に臨みました。


SY-300オフィシャル・サイト→http://jp.boss.info/products/sy-300/

SY-300の中身

それでは、SY-300のディスプレイを見ながら中身を見てみましょう。「SYNTH/FX」ボタンを押すと次のようなエディット画面に切り替わります。左側に【OSC】とありますが、これが「オシレーター」と呼ばれるセクションでここのパラメーターを変更することでさまざまな音色を作っていくことができます。3個のOSCを組み合わせてサウンドを構築することが可能です。

・オシレーター
各OSCでウェーブ・フォームを選択します。「正弦波」とか「矩形波」とかいうヤツですが、シンセサイザーの基本がわからないという方は、齋藤久師さんによる「GAIA」というシンセサイザーの解説を読んでみてはいかがでしょう。とてもわかりやすく書かれているので参考になると思います。以前、僕自身もこれでシンセの基本を理解することができました。


加えて、SY-300ではギター信号そのものをオシレーターとして利用することも可能になっています。(但し、ピッチ系パラメーターには制限あり)



・フィルター/アンプ
フィルターはシンセらしいサウンドに仕上げるには欠かせないパラメーターです。最もよく使われるのは【LPF(ローパス・フィルター)】でしょう。【CUTOFF】でカットするポイントを指定し、【RESO(レゾナンス)】でクセを強調します。


・LFO
これはギタリストでもわかると思います。周期的にパラメーターを動かすことで効果を得るためものですね。音量(=AMP)を周期的に変化させれば「トレモロ」とか。


・シーケンサー
自分で弾いた音をきっかけに、指定した音程でシーケンス・パターンを生成できます。勿論、テンポを変えることも他の楽器やDAWと同期して鳴らすことも可能です。バンドに機械的なフレーズを加えるのに打ってつけな機能。


・エフェクター
4系統のエフェクターを自在に組み合わせて使うことができます。実際には空間系は「CHO&DELAY」などのように複合エフェクトも何種類か搭載されているので、さらに多くのエフェクターを掛けられる仕様です。どのオシレーターにどのエフェクトを掛けるかのルーティングも自由自在です。


ユニークな「BLENDER」機能

「BLENDER」ボタンを押すと、既に存在するパッチのOSCを抜き出し、ランダムに組み合わせることができます。「AUTO」を使えば、まるでスロット・マシンのように勝手に組み合わせを選んでくれたりもします。偶然性を狙って次々に切り替えて音出しすることで、思いも寄らない奇抜なサウンドに出会えるかもしれません。こりゃ面白い!



他にも、GTシリーズでもお馴染みの、「ウェーブ・ペダル」などを含む多彩な「コントロール・アサイン」や、パッチごとに凝ったルーティングを設定可能なアウトプット・アサイン、可能性を拡張できるUSB/MIDI機能を搭載。さらには、PC/Mac用のエディター/ライブラリアンも用意されています。


よりギターに近い弾き心地でありながら、従来のギターとは全く異なったサウンドを作りだすことができるSY-300。PCMシンセの代用としてではなく、新しいギターサウンドを構築するためのツールとして使ってみてはどうでしょう?つまり、よりエフェクター的な発想でSY-300を使用することも可能なモデルと言えるでしょう。コンパクト・エフェクターやギターアンプと組み合わせたらさらに面白いかも。僕もこれからいろいろ実験してみるつもりです。



2015年5月25日月曜日

BOSS・ES-8レビューその2

発売直前の画期的スイッチャー=「ES-8」のレビュー第2弾です。既存のスイッチャーを大きく超える多彩なコントローラー機能をご紹介しましょう。

※ES-8レビューその1はこちら

コントロール・イン

外部フットスイッチなどでES-8本体の設定をコントロールすることができます。僕は写真のようにFS-7を接続していますが、TRS(ステレオ)ケーブルを使うことで「CTL1&CTL2」として2系統の操作を1本のケーブルで行えるようにしています。


省スペースのため、L字プラグのTRSケーブルを使用。これは「Custom Audio Japan」製のものです。


ES-8のアサインをパッチごとに設定することで、多様な効果を得ることができます。僕自身はここに「インプット&アウトプット・セレクト」や「パッチ・モード時にディレイやコーラスだけをOn/Offするスイッチ」、「Volume LoopのON/OFF」などをアサインしています。

●コントロール・アサイン

外部フットスイッチだけでなく、本体の全てのスイッチをカスタマイズすることができます。パッチ・モード時でも特定のフット・スイッチをコントロール用に動作させることができるので、自分にとって使い易い設定を考えてみてください。例えば、ループの「7」や「8」などにアサインすれば、7&8のパッチ変更はキャンセルされ、コントロール・ペダルとして動作します。その際、他のパッチに移動した場合は、通常の「7 or 8」番パッチを呼び出すようにすることもできるというところがミソです。
 
それぞれのスイッチに対して簡易な設定を行うことができる他、GT-100の8個を超える、12個の「Assign」を割り当てることができます。「SOURCE」と「TARGET」を設定することで、ES-8本体と外部に接続した機器をコントロール可能。


GTシリーズのように、各スイッチに付随しているLEDの点灯さえも設定可能。僕はLoop=「8」にディレイを接続していますが、パッチ・モード時もディレイがOnになっているパッチは8番のLEDが点灯するようにしています。

コントロール・アウト

パッチに追従して「CTL OUT」に接続した機器をコントロールすることもできます。例えば、「DS-2」のリモート・ジャックに接続すれば、パッチを切り替える度にターボ・モードの設定も自由自在に行えます。


ここも非常に考えられていて、「LATCH」タイプではない仕様のモデルにも対応しています。例えば、Bognerの「Ectasy Red」のリモート機能はモーメンタリー式のスイッチを使う必要があるのですが、通常のモーメンタリーだと本体側のフット・スイッチがキャンセルされる仕様。ES-8はモーメンタリー用に「PLS」と「INV」の2種類が搭載されているので、接続機器に合わせて設定することで問題無く使用できます。


Bognerの場合、「INV」に設定すればEcstasy本体側のスイッチも有効になります。


因みにこのモデルの場合、TRSケーブルを使えばエフェクトのON/OFFとブーストのON/OFFをそれぞれにコントロール可能です。

ディレイ・タイムを追従させる

コントロール・アウトに接続したディレイなどの「Delay Time」をパッチに追従させることも可能です。DD-20を使って設定方法を説明した動画を撮りましたのでご覧ください。


ここではタイム表示があるDD-20で説明していますが、タイム表示が無く、メモリー機能のない「DD-7」などを使った場合も、テンポに対して正確なDelayTimeを設定出来てしまうんですね。スゴイ!

一方、DD-7の【Delay Time】を動作中に動かすとピッチがグニョグニョに変化することはご存じだと思います。「EV-5」などを使って足で操作するなんていうワザも有名ですね。ES-8の「EXP」OUTを使用し、「Wave Pedal」という機能を使って自動化することもできます。DD-7との接続には「TRS(ステレオ)」ケーブルを使用します。これもムービーを見てみてください。


ここでは、わかりやすいように派手に動かしましたが、狭い範囲を微妙に動かすことで、「モジュレート・ディレイ」的な効果を得ることもできます。ピッチ・シフターの「PS-6」やフェイザー「PH-3」などのモジュレーション系に同様のアサインを行っても面白いと思います。


MIDIセッティング

MIDIは大きく分けると以下のような使い方が想定されます。

1. 外部のMIDI機器からES-8をコントロール
GTシリーズなどのパッチ・チェンジと同期させたり、ステージ袖でローディーさんが別のコントローラーを使ってパッチ切り替えする場合などに便利ですね。

2. 外部のMIDI機器のパッチを同期
マルチ・エフェクターやMIDIとメモリー機能を搭載したモデルのパッチを同期させることができます。MIDIチャンネルを分けることで、最大で8チャンネル分のプログラム・チェンジを送信できます。勿論、その際のPCナンバーはチャンネルごとに設定可能です。


3. MIDIコントロール・チェンジ
CCナンバーを送信することで、外部機器側のパラメーターをコントロール可能。パッチ・チェンジ時に、最大でパッチに対して8チャンネル×2=16個ものデータを送信できます。パッチ同期に加え、CTLアサインも行えばさらに多くの設定を送信することも可能です。MIDI系もCTL系も、パッチ切り替え時に自動送信させることと、特定の動作(例えばスイッチを踏むことなど)で送信することを別々に設定できる、というところがポイントです。


4. テンポ情報の同期
DAWや外部機器とテンポ情報を共有することができます。スライサー=「SL-20」や新しいギターシンセ=「SY-300」と同期させても面白そうです。同期はMasterとしてもSlaveとしても使えます。

さて、いかがだったでしょう?あまりにも多彩な機能があるES-8なので、僕自身もどのように使用するかまだまだ実験中という感じです。面白い使い方を発見したらまたレポートします。

2015年5月22日金曜日

「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック 3」発売!

新刊「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック 3」が昨日、無事に発売されたようです。今回は、「BOSS歪み系ペダル編」ということで、全41モデルを対象に、たっぷりと時間を掛けて書き上げました。おそらく他では読むことができないBOSSの歪み系の秘密や、BOSS以外のモデルとの比較なども交えて執筆しています。是非、ご覧ください!

本書の「はじめに」の部分を公開致します。

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はじめに

 多くのギタリストにとって、ギターやアンプの次に最も重要なアイテムは、歪み系エフェクターなのではないでしょうか? BOSSのコンパクト・シリーズは、既に100種類を超えるモデルがリリースされていますが 、その中の約1/3が歪み系であることからも、その重要性を計り知ることができます 。今回の「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック」は、BOSS の歪み系エフェクターがテーマ。 本書では、 BOSSコンパクトの歪み系モデルを41 機種(ローランド・ブランドのモデル、“FB-2”やレジェンド・シリー ズを含む)について詳細に解説します。 各モデルが発売された歴史的背景や、後に与えた影響なども 踏まえて発売順にご紹介。現行機種として今でも購入できるものも、すでに生産が完了しているもの も分け隔てなく書いたつもりです。
 筆者は1989年以降、セッション・プレイヤーとしての活動と並行し、BOSSのデモ・プレイヤーとして多くのイベント、セミナーなどで演奏してきました。「BOSSコンパクト辞典」の付属CDや、楽器店で配布されていたDVDや公式サイトの動画などでデモを聴いていただいたことがあるかもしれません。今回、これらの仕事を通して発見したことや、開発エンジニアとのコミュニケーションの中で知り得たさまざまな情報を公開します。
 各モデルに搭載されているコントローラーが、実際はどのように動作しているかや、電気回路が各製品にどのように影響しているかなど、僕自身が疑問に思っていたことも含めて解き明かしていこうと思います。
 今回の執筆にあたり、現行モデルは勿論、今や伝説となった「幻のモデル」や BOSS 以外の歪み系 モデルも含めてたっぷりと時間を掛けてテストを繰り返し行ないました。 付属の CD にはこれらの実験中に録音した音源から選りすぐったサウンドを収録しています。こちらも是非、聴いてみてください。
 お楽しみ頂けたら幸いです。
 
                             中野 豊


2015年5月17日日曜日

BOSS・ES-8レビューその1

いよいよ、5月28日(木)に発売が決定したBOSSのスイッチャー=ES-8。使えば使うほど、スゴイ製品に仕上がってきたなぁ、と実感しています。僕自身はエフェクターボードの中身をあれこれと入れ替え実験継続中なんですが、ホント、楽しすぎます。コンパクト・エフェクターだけでなく、GT-001を入れてみたりしています。(これは結構便利かも!)

※ES-8レビューその2はこちら


「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック3」とES-8

5月21日(木)には拙著「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック 3」が発売されます。今回はBOSS歪み系エフェクターがテーマ。モデル別のサウンドの違いや、他のメーカーとの比較実験などを行う際に、この「ES-8」は非常に役に立ちました。ケーブルを差し替える事無く、多数のモデルを聴き比べられる環境がなければ書けなかったことも多かったですし、何より、パッチ切り替え時の音切れやノイズなどは全く無いことで、正確な判断ができたように思います。この本については後日に改めてご紹介させていただく予定です。(Amazonへのリンクはこちら!

ES-8でどんなことができるかはBOSSの公式サイトにも詳しく解説されているので、ここでは具体的な画面構成などをご紹介しましょう。

プレイ・モードとエディット・モード

まずは基本的な設定方法から見ていきましょう。ES-8はBOSSのマルチ・エフェクター=GTシリーズなどと操作手順が似てますので、BOSS製品を触ったことがあれば、基本的な操作はマニュアルを見なくても簡単に行えるはずです。さらに、ES-8はエフェクトのOn/Offや接続順序、簡易なコントロール・アサインなどはエディット・モードに入らなくても行えるようになっているんですね。本体の[ DISPLAY/EXIT ]ボタンを押すと、次々に画面が切り替わっていきます。パラメーターを表示するだけでなく、カーソル&「+&-」ボタンで設定を変更出来るというわけです。



・パッチ・ネーム画面


これが基本の画面。パッチ毎にテンポを設定することができます。パッチネームの変更は [WRITE]ボタンを押してから行います。


・Loop On/Off画面


各ループのOn/Offを表示/変更できます。


・Loop Structure画面


エフェクトの接続順やパラレル・チェイン(並列接続=複数のエフェクトをミックス)の設定を行えます。また、「キャリー・オーバー」という機能を使うことで、ディレイなどの残響を残したままパッチの切り替えが可能になります。

一連の流れを動画にしてみましたのでご覧ください。


その他に「コントロール・アウト」の設定画面があります。


クイック・エディット

ここまでの設定はボタンを手で押していましたが、足元に置いたスイッチャーを立ったままでエディットすることができる機能もあります。各エフェクトのOn/Offを行える「マニュアル・モード」が搭載されているスイッチャーは多いですが、ES-8は保存の操作までを足で行えるようになっているのです。これも動画で確認してみてください。


屈んだり、しゃがんだりしなくていいので、各エフェクトの組み合わせなどを演奏しながらテストできます。動画では先にスイッチを長押ししていますが、マニュアル・モードで設定後に [MEMORY/MANUAL]スイッチを長押しでもパッチの保存が可能です。


インプット&アウトプット・セレクト

2系統のインプット&アウトプットでギターの持ち替えや、アンプの切替を変更できます。フット・スイッチなどに切替をアサインすることで、ケーブルを差し替える事無く素早く聴き比べができそうですね。スタジオでJC-120とマーシャルのどちらを使うか、なんて悩んだ時などにも超便利!



バッファーとパッチ・レベル

スイッチャー本体のバッファー・アンプを、ケーブルの接続自体を変更すること無く、内部スイッチで切り替えられます。システム全体を設定することも、特定のパッチだけ変更することもできます。ヴィンテージ仕様のファズやワウ・ペダルなどを使う場合、バッファーを通した後に接続するとサウンドが変わってしまうことがありますが、ES-8ではそのエフェクターを使うパッチのみ、バッファー・オフに設定できるようになっています。


バッファーはインプット部とアウトプット部を別に設定できるこだわりの仕様。アウトプット・バッファーをOnにすれば、各パッチの音量調整もES-8側で行えます。


個人的にこのモデルを使って特に感心したのは、バッファー=On時のサウンドに劣化が認められなかったこと。低域や高域のロスが全くありません。通常使用ではOnで使うことを推奨します。やりたいことを妥協せずに、数多くのエフェクターを使えるのがメチャ嬉しいです。


ボリューム・ループ

ボリューム・ペダルを接続できます。ES-8ではこのループの接続順さえパッチごとに変更出来るので、あるパッチでは歪みの後段に接続して音量調整に、また別のパッチでは最前段に設定してボリューム奏法や歪みの深さをコントロールしたりできます。

また、このループはフット・ボリューム以外のものを接続してもOKです。僕はライブではFV-30Lなどを使うつもりですが、自宅ではジャンクション・ボックスを経由して、第9のループとして利用しています。

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ちょっと長くなったので、強力なコントロール&アサイン機能や、MIDIなどの仕様については「その2」として書くことにします。暫し待たれよ〜。