2016年5月21日土曜日

BOSSの新チューナー=TU-3S登場!

先のドイツで開催されたフランクフルト・メッセでBOSSの新しいチューナーが発表になりました。まずは、見た目もカワイイ"TU-3S"をお借りしてテストしてみました。

“TU-3S”はこれまでの”TU-3”のフットスイッチ部を省略し、小型化&軽量化したモデルです。手のひらに載せてみるとその軽さが実感できます。ノーマルの”TU-3”と違うのは、「チューニング機能のOn/Offスイッチが無いこと」、「バイパス・アウト・ジャックのカット」、「ACアダプターのみで動作」という点。


また、パネル面に傾斜が付けられているところも特徴。


机上やアンプの上、立ち位置から離れた場合など、前方から見たときの視認性がアップしそうです。


他のエフェクターへの電源供給機能はこれまで同様に搭載。2系統のパラレルDCコードが同梱されています。


ボリューム・ペダルやスイッチャーのチューナー・アウトに接続しているユーザーには特にオススメ。エフェクター・ボードの省スペース、軽量化にもつながります。僕も早速ボードに載せてみました。


BOSSのコンパクト型チューナーの人気の秘密は、スピーディーにチューニングを行えるところ。表示が速く、しかもふらつきが少ないので、ライブ時の曲間などで時間の余裕が無い場合でも安心です。プロのユーザーが多いことも納得です。

TU-01も!

また、”TU-01”という新しいクリップ式チューナーも発表になっています。チューニングが合うとディスプレイ全体の色が「白」→「緑」に変わるのでわかりやすいですね。



何と技クラフト・シリーズの”TU-3W”も新登場。こちらは次回の記事で詳しくご紹介しましょう。

2016年5月15日日曜日

ずっと欲しかったモノ

ライブやセミナーなどが仕事のメインだった頃に比べると、ここ数年で家で過ごす時間が圧倒的に増えました。音源制作や原稿執筆など長時間に亘って机に向かってする仕事も多くなってきています。これまで自宅で使っていたイスは、20年くらい前に近所のホームセンターで購入したボロボロのオフィス・チェア。2万円もしなかったように記憶しています。

ホームセンターにて

ニトリやイケア、ホームセンターなどに行った時に、ついつい立ち寄ってしまうのがオフィス・チェアの売り場。高級なワークチェアに腰掛けてみると確かに座り心地は最高です。でも値段はどれも非常に高価(8万円〜20万円)。「エルゴヒューマン」、「岡村製作所」、「ハーマンミラー」というメーカーの製品がこの分野の売れ筋のようですね。特に「岡村製作所」の”コンテッサ”というモデルはそのまま寝てしまえるのではないか、と思えるほどの快適さ。いつかこんなイスが買えたらな〜、などと思ってました。

きっかけは故障!

今年(2016年)の1月頃。4月に発刊予定だった「プロフェッショナル・エフェクター・テクニック 4」の原稿執筆が佳境に入ったある日、これまで使っていたイスの座面の高さ調整がついに出来なくなってしまいました。机にあごを載せるようにキーボードを叩く姿は情けなくて人には見せられません。どちらにしても代わりのイスを早急に購入する必要があり、「エイヤ!」とばかりにポチってしまったのが、ハーマン・ミラーの”アーロンチェア”というイスだったのです。


何故、アーロン・チェアを選んだのか

試座した時に気に入った"コンテッサ"ではなく、"アーロンチェア"を選択したのかは以下の理由からです。

・失敗を恐れたから
いきなりネガティブですが、いろいろと悩んでいる時間が取れないこともあって、レコーディング・スタジオなどで定番のモデルにしておけば安心かと考えたから。でも、15万円もの出費ですから、製品が届くまではドキドキしました。

・夏、涼しそう
楽器を演奏するには、メッシュ仕様は暑い日も涼しそう。これから夏になってどうなるか、楽しみです。

・12年保証
高価なイスではありますが、使用期間を考えれば意外に単年ごとのコストとしては高くないのかも、と考えたから。しかも、メーカーの保証が12年も付いているとのことなので。クルマよりも長い付き合いになりそうですからね。

実際に使ってみて

結論から書けば、ワークチェアと呼ぶに相応しい、仕事に向き合うにはうってつけのモデル。メッシュが体にフィットして、集中して楽器やパソコンに向かっていても疲労感はとても少ない印象です。そういえば、腰痛にもならなくなりました。正しい姿勢が保たれることも影響しているのでしょうか、就寝時の寝付きも良くなったような気がします。

一方、常に臨戦態勢で、どのように調整してもリラックスできるイスではありません。リクライニングは可能ではありますが、固定することはできませんし、ヘッドレストが搭載されていないので、くつろいでの読書やCD鑑賞、ましてや昼寝などには全く向きません。それ用のイスがもうひとつ欲しいかも…。

ひじ掛けの調整

キーボード入力時、机の高さに合わせてアームレストの高さを調整し、左右を閉じることで肘を固定できます。個人的にはあまり使いませんが、座面を前傾姿勢に固定することも可能です。


ギターを弾くときはアームレストを広げて、浅めに座ればOK。どうしても邪魔に感じるなら高さを最低位置まで下げることも可能です。


因みに、レコーディング・スタジオのアーロンチェアはコントロール・ルームに置いてあることが多く、プレーヤー用は写真のようなひじ掛けの無いイスが用意されます。


というわけで、今のところ購入したことは後悔していませんが、使う人によっては評価も異なるかもしれません。個人的には、なるべく大事に長く使っていこうと思っています。

2016年5月11日水曜日

80年代後半の機材

1980年代の後半になると、少しづつですがライブの仕事が増えてきます。大江千里さんや麗美さんの仕事に加え、中原めいこさん、斉藤由貴さん、和田加奈子さん、種ともこさん、などのライブも思い出深いです。

衝撃的な"GP-8"のデビュー

1987年の初頭、世界で初めてのプログラマブル・マルチ・エフェクター=「GP-8」の広告がギターマガジンに掲載されました。本体価格は¥99,800。計8種類のエフェクター(オート・ワウ、コンプ、オーバードライブ、ディストーション、イコライザー、フェイザー、ディレイ、コーラス)を内蔵。これらを自由に組み合わせたパッチメモリー機能、ディレイ前にインサート可能なセンド・リターン端子、MIDIや外部コントローラー端子など、1Uラックにこれらが収められた画期的な仕様で、僕自身もすぐに楽器店で予約しました。発売日(1987年3月27日)にフットスイッチ=FC-100(¥29,800)と一緒に入手して、1992年頃までメインのエフェクターとして使用していました。

当時の機材リスト

で、これがその頃の機材写真です。(各写真はクリックで拡大表示できます)


仕事の内容によって若干入れ替えはありましたが、基本的にはこんなセットでプレイしていました。ラック上からワイヤレス・システム、パワー・ディストリビューター(以上はレンタルで詳細は不明)、Rockmanのオーバードライブ(予備用)、”GP-8”、dbx=“160X”(コンプ)、Procoの”R2DU”(RAT×2台内蔵)、ローランドのディレイ=”SDE-3000”という布陣。歪みはオーバードライブ系はGP-8内蔵、ディストーション系はRATを使い分け。GP-8のダブリング→SDE-3000のロング・ディレイなどもよく使う設定でした。

アンプはセイモア・ダンカンの真空管アンプ="Convertible 100"。これは5本のプリ管がカセット式になっていて(Normal、Classic、Presence、High Gainなど)、組み合わせによってサウンドを変化させることができました。2台のアンプはクリーン・セッティングにしてコーラスでステレオにしています。


足元はGP-8のコントロール用のFC-100が中心。EV-5でGP-8のボリュームをコントロールしたり、チューナー用のアウトの装備など、後のマルチ・エフェクターに継承されている機能は既に備わっていました。右側の黒い箱はRAT用のOn/Offスイッチ、左のFV-100(ボリューム・ペダル)はエレアコ用です。


これはもう少し後に自宅で撮影したラック・エフェクター群。GP-8や160Xの他にレコーディングでよく使ったBOSSの”GL-100”やRocktoronの”PRO GAP”といったプリアンプも写っています。他にも、Roland "DEP-5"、Yamaha "SPX-90"、Sony "MU-R201"、ALESIS "Quadraverb"などなど、空間系を中心に沢山買いました。

GP-8の弱点

最強のマルチ・エフェクター="GP-8"の唯一の弱点は、"FC-100"と本体を接続する専用ケーブルが断線しやすかったこと。80年代のある日、ライブのサウンド・チェック時に断線が発覚し、予備も持っていなかったことで困り果てたことがありました。会場は当時新宿にあった「日清パワーステーション」。「ミュージックランドKEY新宿店」に駆け込むも、そのケーブルは取り寄せになるとのこと。途方に暮れたのですが、何と店頭用の備品のケーブルを貸してくださって、何とかその日のステージを乗り切った、なんてこともありました。多くの人の助けがあって今があることを忘れてはいけませんね。

マルチ・エフェクターの進化

“GP-8”はアンプ・シミュレーター的なものこそ搭載されていませんでしたが、現代のモデルのほとんど変わらない仕様。それだけ完成度が高かったということなのでしょう。その後のフット・マルチ=”ME-5”(1988年)やプリアンプ=”GS-6”(1989年)など、発売される全モデルを購入して愛用していました。その後、僕自身がRoland/BOSSの仕事に関わるようになるとは…。当時は夢にも思っていませんでした。


2016年5月4日水曜日

エレアコ用プリアンプはこれで決まり!~VE-8登場!

BOSSの新製品「弾き語りボーカリストのためのオール・イン・ワン機器」 Acoustic Singer=”VE-8”が発売になりました。ボーカル用エフェクト+ギター用エフェクト+ルーパーが一体化されたこのモデル。演奏ながら歌うことが楽しくなる製品です。


エレアコをライブで使う

レコーディングでは、ほとんどの場合マイクを使ってアコギを録音しますが、ライブに於いては何らかのピックアップを搭載したエレアコを使います。ピエゾ・ピックアップの他、マグネット型やコンデンサー・マイク型もありますが、いずれにしてもマイクで録音したようなサウンドにはなりません。それを程良く「マイク録り」風のサウンドに調整するための「エレアコ用プリアンプ」が各社から発売されています。しかし、この「ピエゾ」独特のサウンドは、ライブ時には音抜けが抜群に良いこともあり、一概には「悪い音」とは言えないところがミソなのです。

VE-8のギター用エフェクト

本格的なエレアコ用プリアンプと比較しても勝るとも劣らない、心地良さとヌケの良さを両立することができるサウンド。最小限のコントローラーですが、「Acoustic Resonance」と「Shape」スイッチだけで多彩なバリエーションが得られます。前者は最小値ではピックアップのピュアなサウンドになり、ツマミを上げていくとアコギらしい響きに連続可変で微調整することができます。「Shape」はギターを4種類のキャラクターに変更できる機能。図太いブルージーなサウンドから煌びやかなサウンドまで、フレーズや使用ギターによって選ぶ事ができます。高品位なリバーブのモード変更(ホールやルームなど)も勿論可能です。


VE-8をアコギ用プリアンプとして使った場合、「ナチュラル」な響きが得られる点がとても気に入りました。ギター本体のキャラクターを殺さずに、演出過多にならない自然なサウンドが得られます。どんな楽器を使っても、ピエゾ・ピックアップからのサウンドは似たような音になってしまいがちですよね。今回、ハイランダー製PU搭載のマーティンD-35とフィッシュマン搭載のギブソンLG-2で試してみましたが、生音の違いがそのままVE-8からの出力で認識できたのには驚きました。


フットスイッチには「CHORUS」と記載されていますが、8種類のタイプに変更可能。しかも3種類まで同時に使用できます。個人的にはソロ用にディレイを使う場面が増えそう。今までライブではBOSSの”AD-8”を使ってきたのですが、今後の仕事ではVE-8に置き換え決定です。


ボーカル用エフェクト

こちらのサウンドもナチュラル。「Enhance」と「Reverb」を掛けるだけで、生声だけよりも心地良く歌うことができます。久々にビートルズの曲とかを歌いまくってしまいました。ギターのコードに追従させてコーラスを付加できるハーモニー・エフェクト(キー指定も可)、プロ・ボーカリスト御用達の”VE-20”でもお馴染みのピッチコレクトや「ラジオ・ボイス」なども楽しめます。瞬時に全てのエフェクトをバイパスできる機能はライブでのMC時に重宝しそうです。


ギターとボーカルのエフェクトの組み合わせをパッチとして50個まで保存できます。

ミキサーとしてのVE-8

弾き語りミュージシャンにとっては、VE-8本体にイヤモニを接続するだけで、簡単にプロ同様の環境を構築できます。ステージで最も重要なモニター・サウンドをPAエンジニアの手を煩わすことなく最良の状態に仕上げることができるのです。ボーカルとギターのバランス、リバーブの調整も手元で行えます。しかも、4系統の出力のアサインも自由自在。歌とギターをパラで別チャンネルに送ったり、イヤモニ側だけにリバーブを掛け、アウトプットではドライ音を出力したり、などと状況に応じた設定も可能です。



チュートリアル・ビデオ

このVE-8の基本的な機能を説明したビデオがYouTubeで公開になっています。上記の映像もその一部です。恥ずかしながら、少しだけ歌ったりもしていますが、よかったらご覧ください。(YouTubeにリンクしています)